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ムダとむだと無駄

2018年12月19日 | 読書
 著者の名前を見て、あっ渋滞学の人だと思い手にとった。ずいぶん前にも一冊読んでいた。渋滞が研究対象になると知った時も刺激を受けたが、今度はなんといっても「無駄」。かなり主観的な事柄ではないかという気がするが…。これがなかなかに面白い。単に生産や仕事効率のことだけでなく、深遠な課題なのだ。


2018読了117
 『無駄学』(西成活裕  新潮選書)



 例えば「俺の人生は無駄だった」といった演劇っぽい台詞がある。そういう場合の心理状況は特殊だろうが、この言葉を冷静に考えれば誰でも無意味さがわかる。その論理について教えてくれる一冊と言ってもいいようだ。「無駄を科学する」という第一章を皮切りに、無駄という生活語彙が科学的用語に見えてくる。


 三つに区分して定めている。「『ムダ』→見える無駄 『むだ』→見えにくい無駄 『無駄』→見えない無駄」これはわかりやすい。「ムダ」は当事者が意識している、「むだ」は意識していないが結果的にわかる、そして「無駄」は自分でコントロールが難しい、予測不可能なものだ。主対象は「ムダ」と「むだ」となる。


 「ムダ」「むだ」をなくすために、具体的には企業改善で著名な方々たちと実践したこと、また有名な「トヨタ生産方式」などの例などを引いて図式化をしている。「ムダとり学会」が組織されているほど、需要と供給、消費と生産の関係においては改善点が明らかにされている。その肝はやはり「渋滞」させないことだ。


 印象深いのは、コンビニでおにぎりなどは「売れ残りが1個だけ出るように販売するのがよい」という戦略だ。これは目標個数を定めた生産に関して「売り逃し」を最小限に防いだ根拠になるという。経済的にはこうした考え方が浸透しているのだ。しかし個人的には、生き方や地球規模の無駄がもっと興味深かった。(つづく)

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