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新鮮な、ジレンマ、あるよなあ

2008年07月13日 | 読書
 ジレンマ――これは、社会制度や業務の処置の仕方などすべてが、きめ細かく法規やマニュアルなどで決められている現代社会において、専門的職業人が仕事の進め方に柔軟性を取り戻すための、重要な指標となるキーワードではなかろうか。

 柳田邦男『壊れる日本人』(新潮文庫)

 鳥取市にホスピスを開いている医師のエッセイが紹介されている。
 印象的なことばだ。

「ああ、ここに、新鮮な、ジレンマ、あるよなあ」
 
 医療の世界も教育の世界も、ジレンマはつきものである。
 しかし、そのジレンマをだんだんと感ずることが少なくなっている。いや、目を背けてどこかに押し込めようとしているのかもしれない。法規どおりマニュアルどおりにやることでストレスを抱えたくない…というような思い。
 ジレンマが、それを新鮮と思える心が、人間を対象とする仕事をしていくうえでは必須なのだということをかみ締めてみたい。
 医師のことばはこう続く。

 すぐに結論は出さない。逃げない。するとジレンマは、思いがけないところから、融け出していくことがある