THE ARCTIC - オーロラの地を旅する

北欧北極圏、アイスランド、グリーンランドの旅行情報

北極海航路をめぐる戦略

2013-03-20 | 北極圏ニュース
試験的に利用する事例がますます増えている北極海航路。最近は北極海航路を輸出入の双方で利用する船が増えているのも特徴だ。
これまで欧州からアジア太平洋諸国への輸送が中心だったが、2012年は中国から肥料などを載せた輸送船が初めて欧州に向かった。
北極海航路を利用した日本へのLNG輸送も始まった。ロシア国営ガス会社ガスプロムによると、子会社がチャーターしたLNG輸送船が2012年12月上旬にノルウェー北部のハンメルフェストから北九州市の受け入れターミナルに到着した。

北極海航路の大半は、ロシアの管理海域にあり、その東方のスタート地点にはオホーツク海、そして北方領土がある。最近、ロシア国境警備庁は、北方領土海域に9隻ほどの警備船を配備し、海洋安全保障体制を強化している。
サハリン州交通省のコトリノフ副大臣は、国後島の古釜布(ユジノクリリスク)が北極海航路の補給拠点になりうるとの考えを、極東発展計画に関する会議で示した。
北極海航路の補給基地として古釜布が適した位置にあるということらしい。北極航路ではベーリング海峡を通り、カムッチャッカ半島の東海岸沿いにアルーシャン列島を抜け、オホーツク海に入り、サハリンやウラジオストクにアプローチするためには、千島列島の間を抜けなければならない。通商上でも軍事上でも、択捉・ウルップ海峡の自由通航権を確保することはロシアにとって核心的重要性を持っている。逆に、ここを日本に抑えられた場合の損失は計り知れない。

日本の国会議員の間でも北極海航路は関心が高く、安倍晋三首相を会長に北極圏安全保障議員連盟が結成されている。事務局長は小池百合子議員。民主党、公明党からも参加者がある。

中国の船会社も2013年夏から商業ベースでの航行を予定している。2020年までには中国の貿易の5~15%を北極海航路が担うというシナリオもある。中国と日本の緊張が高まる中、その中国の北極圏シーレーン構想を日本が切断できる能力を持つことは、中国に対する効果的な抑止力になりうるだろう。

さらに北極の氷が解けるような事態になれば、北極点を超える海洋ハイウエーも姿を現し、アイスランドとアラスカが結ばれることになるかもしれない。この海洋ハイウエーは、北大西洋の主要港と北太平洋の主要港をつなぎ、ここから放射状に海運ネットワークが広がっていくはずだ。現在、ロシアのムルマンスクの港とカナダ・チャーチルのハドソンの港を結ぶ高速シーレーンが整備されつつあり、これが実現すれば、ハドソン湾から北米の鉄道へと運輸ネットワークはつながっていく。

韓国やシンガポールなどのように、氷砕能力を備えたタンカー建造に乗り出している国もある。
北極圏のパワーゲームは主要国の世界戦略と安全保障政策を根底から変える潜在的可能性を持っている。



中国砕氷船「雪龍」

最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
花と山歩き (kodacyann)
2013-05-15 18:16:01

 本格的に航路できると

大幅に物流変わります

温暖化と経済効果

複雑な面もある
返信する
Re:花と山歩き (spitsbergen2008)
2013-05-17 00:31:24
これから本格的に温暖化が進むかは疑問です。グリーンランドの方も、これから寒冷化が進むという人、年によって暖かかったり寒かったりするんだ(2012年冬、いつもは凍らない首都NUUKの港が凍ったので)、という人がいました。
返信する

コメントを投稿