THE ARCTIC - オーロラの地を旅する

北欧北極圏、アイスランド、グリーンランドの旅行情報

キャンプ・センチュリー

2019-07-25 | 北極圏ニュース
数週間前、NHKBSのニュースでキャンプ・センチュリーが取り上げられていた。キャンプ・センチュリーについて2年ほど前下書きしていたが、このタイミングでアップロードすることにした。
キャンプ・センチュリーとは1959年に米国陸軍工兵隊によってグリーンランド氷床の地下に作られた極秘の軍事基地。
氷床の動きが予想よりも早いため、1967年に完全に放棄された。基地はグリーンランドのチューレ米軍空軍基地から150マイル(241Km)東にあった。
最初、グリーンランドの保護国であるデンマークにも秘密にされていたが、隠し通せるわけでもなく後に「研究施設」として建設された。
世界初の移動式原子炉によって、基地のすべての電力は供給されていた。
基地は閉鎖後、氷床の地下に永久に埋もれるものと考え、基地の内部には、基地運用で使用した小型原発で使用した化学廃棄物や放射性廃棄物はそのまま放置されていた。
しかしこの楽観的な仮定はIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の気候シナリオの下で有効ではなくなった。地球温暖化のためこの施設はおそらく、21世紀の終わりまでに露出されるという。
NHKでは、『温暖化を食い止めなければ、氷の中に閉じ込められてきた大量の残留物が流れる出るおそれがある。』とのこと。しかし、『どんな物質がどれくらいあり、どんな状態にあるのか、詳細は明らかになっていない・・・』

2017年、デンマークの政府とグリーンランド政府との合意で、デンマークとグリーンランドの地質調査研究所(GEUS)の主導で、キャンプ・センチュリー気候監視プログラムを設立することを決定した。



「Camp Century」約200人が居住していたとのこと



基地は単に氷を掘っただけのトンネル構造



GEUSの調査チーム 2019年



パナマ文書

2016-04-08 | 北極圏ニュース
いま世界に激震が走っているのをご存知でしょうか?それも、あのスノーデン事件をも凌ぐ激震が‥‥

カリブ海のタックスヘイブンにおける各国首脳や著名人の租税回避行動を浮き彫りにした「パナマ文書」の報道を受けて5日、
アイスランドのグンロイグソン首相が辞任した。「パナマ文書」報道による最初の主要人物の辞任となる。( BBCより引用 )



首都レイキャビクでは5日、首相の辞任だけでは不十分とする野党支持者や市民が、来年予定の総選挙の前倒しを求める大規模デモを行ったらしい。

2008年のリーマン・ショックの時も、世界中でアイスランドがいち早く影響を大きく受けたのは記憶に新しい。
金融立国を目指し、銀行部門の資産が国の経済規模の実に10倍にも達していたアイスランドは、当時のゲイル・ホルデ首相が国民に「非常事態」を宣言。
自国通貨アイスランド・クローネは暴落して通貨危機を引き起こし、外貨建て債務が急増。国内の銀行は政府管理下に置かれることになり、国家破綻寸前に陥った。
そののちアイスランドの危機が各国に波及していったのはご存じのとおり。

「パナマ文書」には他にロシア・プーチン大統領の友人や、中国・習近平氏親族、イギリス・キャメロン首相の亡父、ウクライナのポロシェンコ大統領、アルゼンチンのマウリシオ・マクリ大統領、パキスタンなどの首相の親類に関する記載があるとのこと。
ロシア連邦政府はこの流出事件を「西側の陰謀」と呼び、西側が恐れるプーチンが今回の事件の主な標的であるという。
確かに、アメリカ人の名前は今のところほとんど挙がっていないようだし、リストを見ると反米的な国の政治家などがターゲットになっているようにも見える。

しかしなんで日本のニュースでは、このような最大級のスキャンダルがあっさりとしか取り扱われないのだ?
「パナマ文書」にはみなさんご存知の日本の大企業や個人の名前も記載されている。もはや「パナマ文書」関連ニュースは日本のマスコミからの情報はあてにできないかも。



“ 浮かぶ原発 ” 北極圏へ

2015-04-22 | 北極圏ニュース


完成が遅れていたフローティング原子力発電所が2016年10月までに北極圏で稼働する予定となった。

ロシア副首相のドミトリー·ロゴージンは言う。
「この原子力発電所は、北極圏のあらゆる陸上のインフラストラクチャーにケーブルを介して接続することができ、電力を供給することができる。
フローティング原子力発電所は北極圏の港湾都市、産業インフラ、石油·ガス掘削リグや製油所に使用され、北極圏開発に大きな役割を果たすことが可能だ。」

ロシアの原子力機関ロスアトムによると、中国、アルジェリア、インドネシア、マレーシア、アルゼンチンなど15カ国がこの発電所の購入に関心を示しているらしい。

このフローティング原子力発電所「Academic Lomonosov」は、長さ144メートル、幅30メートルほどの非自走式船である。
排水量が21,500トン、原子炉を2炉保有し、69人の乗員を予定しており、約2万2千世帯に電力を供給するのに十分な70メガワットの発電量を誇る。

この開発は、ロシアの原子力砕氷船の北極における長年の運用の経験に基づいており、史上初の量産水上原子力発電所として、移動式発電所の旗艦事業になりうると期待されている。

皆既日食 IN 北極圏

2015-03-10 | 北極圏ニュース
2015年3月20日に起こる皆既日食のため、北極圏が熱い視線を浴びている。今回の皆既日食は北大西洋から北極にかけて起こり、それを観測できる地球上で唯一の​​人口集積地が、フェロー諸島、スバールバル諸島となるからである。
日本でも複数の旅行代理店がツアーを開催しているが、お値段もかなり高めである。

ロシアのアルハンゲリスクを拠点とする航空会社ノルダヴィアは今回、ムルマンスク空港発のバレンツ海とノルウェー海上空を飛ぶ、4時間の皆既日食観測ツアーを企画した。
ツアーに使用する機材はボーイング-737。1席1万ルーブル(約2万円)と近頃のルーブル安も手伝って、割安と感じる人もいるかもしれない。

フェロー諸島やスバールバル諸島の全てのホテルは天文愛好家によってかなり前から予約で満室。このイベントでホテルに最初に予約を入れた人は2007年だったらしい。ロングイェールビーンに住む人々は、その週末に限り1万クローナ(約15万円)で彼らのアパートを貸し出している。スバールバル諸島の知事はこのイベントに関連して、天気、衣料品、ホッキョクグマ、レストランのキャパシティに関して特別に警告を発している。

今回の日食は、スコットランド、北アイルランド、ノルウェー、グリーンランドでは太陽の90%以上が月にカバーされる日食が見れる。ヨーロッパ、カナダ、ロシア、北アフリカのほとんどの場所でも、少なくとも40%月によってカバーされる日食を見ることができる。

次にヨーロッパで見ることが可能な皆既日食は、2026年8月12日ということだ。



ロングイェールビーン

萎む北極海航路

2015-01-02 | 北極圏ニュース
2014年、北極海航路を通って274,000トンの貨物が出荷された。135,5897トンの貨物が出荷された2013年に比べて急激な悪化である。

ロシア北極海航路局のAleksander Olshevskiyはこの輸送量の減少には2つの理由があるという。
まず、ムルマンスクのKovdor Mining Companyからの輸送を行っていたEvroKhimという会社が、顧客や貨物船側と輸送費について合意できず、結果として今年は通常よりも20万トン少ない輸送量であったこと。
それにコラ半島からガス凝縮物を出荷していたロシアの独立系のガス生産企業「ノヴァテック」社が、出荷元をサンクトペテルブルク郊外に変更したこと。

だが6月以降の原油価格の下落、国際海上輸送市場の下落が北極海航路の価格優位性を引き下げる原因となり、安易に制度を変更するロシア当局のやり方、それにロシアという国のカントリーリスクもこの航路の魅力を減ずる要因となっている可能性もある。
米欧の対ロシア制裁発動でカラ海のプロジェクトが停止になったこと、液化ガスプロジェクト「ヤマルLNG」も資金不足に陥っていることなども今後影響してくるであろう。

ロッテルダム-東京間は、スエズ運河を通った場合、2万1100km、北西航路(北アメリカ大陸の北を通る)では1万5900kmだが、北極海航路では1万4100kmにまで短縮される。専門家の試算では、この航路は従来のそれに比べて、輸送時間を40%縮められる。その結果、燃料も、輸送関係者への給与も、運賃も節約できる。また、この北の海域では、アデン湾などとは違って、海賊の脅威がない。

北極海で液化天然ガスの生産や消費が盛んになっていることも、北極海航路の意義を高めていた。パイプラインの有無に関係なく、どの地点からでも液化天然ガスは運べるし、パイプラインが通っている地域、国の政情不安にともなうリスクを免れる。

ヤマルLNGは、ロシアのノヴァテック社が、フランスのトタル、および中国のCNPC(中国石油天然気集団)と共同開発しており、生産したガスは北極海航路で運ぶ予定である。

ロシアは北極海航路を通じて輸送貨物の量は次の10年以内に大幅に増加することを期待している。 貨物量は「1千万トンもしくはそれ以上」、とメドベージェフ首相は2013年6月キルケネスのバレンツサミットで語っている。

だがスエズ運河の代替としての北極ルートの可能性は誇張されすぎている、との論文が最近学術誌「Polar Geography」上で発表された。

輸送時間が短縮されるというが、厳しい天候や海氷のリスク、より高価な船の建造、耐寒設備投資など多くの要因によってそのメリットは相殺される。
コンテナ輸送となると北極海航路は、特にスエズ運河と比べ信頼性が低い。
貧弱な無線通信、衛星通信、インターネットインフラは、北極海での航行操作のリスクを高める。浅瀬は船舶のサイズを制限し、海氷の動きは船舶の到着時刻の予測不可能性をもたらす。
事故時の捜索、救援、支援体制は整備中であり、北極の孤立無援の地では整備も実施も容易ではない。

2014年貨物量が減少したからと言って、このまま北極海航路が忘れられると考えるのは尚早だ。 ロシア国内輸送は拡大傾向にあるし、ヤマルLNGが順調に進むとすれば、今後の北極海航路の主要貨物となるであろう。