THE ARCTIC - オーロラの地を旅する

北欧北極圏、アイスランド、グリーンランドの旅行情報

Arctic Airlink

2015-01-16 | 空の移動
今まで国境を越えた移動が不便だった北欧北極圏で今回新しい航空会社アークティックエアーリンクが就航した。

スウェーデンの地域航空会社NextJetにより運営され、使用機材は目下近距離用プロペラ旅客機である33~36人搭乗のサーブ340一機のみのようだ。

以前、ノルウェーのトロムソとキールナなどの北部スウェーデンを結ぶバレンツエアーリンクなるスウェーデンの航空会社があった。
小型のプロペラ機を使用していたが、2008年に営業が止まってしまった。

今回のアークティックエアーリンクはフィンランドのオウル、スウェーデンのルーレオ、ノルウェーのトロムソを週5回結ぶ。
気になる値段はトロムソからオウルへ124ユーロからと、ヘルシンキ、オスロ経由で飛ぶよりは安そうだ。

石油ガス資源開発、北極海航路の本格的利用など注目を集める北極圏だが、原油価格の急落、ロシア情勢などここにきて不安定要素が噴出している。
この新しい航空会社も、順調に離陸してくれればいいのだが。

アークティックエアーリンク http://www.arcticairlink.com/

萎む北極海航路

2015-01-02 | 北極圏ニュース
2014年、北極海航路を通って274,000トンの貨物が出荷された。135,5897トンの貨物が出荷された2013年に比べて急激な悪化である。

ロシア北極海航路局のAleksander Olshevskiyはこの輸送量の減少には2つの理由があるという。
まず、ムルマンスクのKovdor Mining Companyからの輸送を行っていたEvroKhimという会社が、顧客や貨物船側と輸送費について合意できず、結果として今年は通常よりも20万トン少ない輸送量であったこと。
それにコラ半島からガス凝縮物を出荷していたロシアの独立系のガス生産企業「ノヴァテック」社が、出荷元をサンクトペテルブルク郊外に変更したこと。

だが6月以降の原油価格の下落、国際海上輸送市場の下落が北極海航路の価格優位性を引き下げる原因となり、安易に制度を変更するロシア当局のやり方、それにロシアという国のカントリーリスクもこの航路の魅力を減ずる要因となっている可能性もある。
米欧の対ロシア制裁発動でカラ海のプロジェクトが停止になったこと、液化ガスプロジェクト「ヤマルLNG」も資金不足に陥っていることなども今後影響してくるであろう。

ロッテルダム-東京間は、スエズ運河を通った場合、2万1100km、北西航路(北アメリカ大陸の北を通る)では1万5900kmだが、北極海航路では1万4100kmにまで短縮される。専門家の試算では、この航路は従来のそれに比べて、輸送時間を40%縮められる。その結果、燃料も、輸送関係者への給与も、運賃も節約できる。また、この北の海域では、アデン湾などとは違って、海賊の脅威がない。

北極海で液化天然ガスの生産や消費が盛んになっていることも、北極海航路の意義を高めていた。パイプラインの有無に関係なく、どの地点からでも液化天然ガスは運べるし、パイプラインが通っている地域、国の政情不安にともなうリスクを免れる。

ヤマルLNGは、ロシアのノヴァテック社が、フランスのトタル、および中国のCNPC(中国石油天然気集団)と共同開発しており、生産したガスは北極海航路で運ぶ予定である。

ロシアは北極海航路を通じて輸送貨物の量は次の10年以内に大幅に増加することを期待している。 貨物量は「1千万トンもしくはそれ以上」、とメドベージェフ首相は2013年6月キルケネスのバレンツサミットで語っている。

だがスエズ運河の代替としての北極ルートの可能性は誇張されすぎている、との論文が最近学術誌「Polar Geography」上で発表された。

輸送時間が短縮されるというが、厳しい天候や海氷のリスク、より高価な船の建造、耐寒設備投資など多くの要因によってそのメリットは相殺される。
コンテナ輸送となると北極海航路は、特にスエズ運河と比べ信頼性が低い。
貧弱な無線通信、衛星通信、インターネットインフラは、北極海での航行操作のリスクを高める。浅瀬は船舶のサイズを制限し、海氷の動きは船舶の到着時刻の予測不可能性をもたらす。
事故時の捜索、救援、支援体制は整備中であり、北極の孤立無援の地では整備も実施も容易ではない。

2014年貨物量が減少したからと言って、このまま北極海航路が忘れられると考えるのは尚早だ。 ロシア国内輸送は拡大傾向にあるし、ヤマルLNGが順調に進むとすれば、今後の北極海航路の主要貨物となるであろう。