吉田英樹のSly&The Family Stone論 #6 /120

　　　　　　　　＝＝＝＝＝ Small Talk ('74) ＝＝＝＝＝

バンドとして機能したSly&The Family Stoneの最後のアルバムであろう、'74年発表の『Small Talk』である。表ジャケットには妻子と一緒に写っているアットホームなシーンが使用されている。『Fresh』同様白地のジャケだ。

前作『Fresh』のメンバーからはAndy Newmark(drs.)がぬけてBill Lordanが加入している。初代のGregg Erricoからなぜか三代続いての白人ドラマーである。いかにもヤンキーっぽい面構えのGregg、少々インテリ風のAndy、BillはHR/HMバンド、Scorpionsあたりにいそうな風貌である。さらに何とViolinプレイヤーのSid Pageを新加入させている。FUNKバンドにViolinと言うのも珍しい、FUNKの歴史の中でもかなり稀な事であろう。

サウンド的には前作『Fresh』の流れを汲みながらFUNK色は少し薄れポップ寄りになっている。シングルカットされた"Time For Livin'"は"Family Affair"系の作りで大ヒットを狙ったと思われるが、Slyとしては少々期待はずれなR&B#10のヒットで終わった。歌詞の内容も初期の過激さは影をひそめたがSlyらしい社会を皮肉った表現は健在だ。

全体的にFUNK色は少々薄くなったとは言え、いかしたFUNKナンバーもある。１曲目の"Small Talk"は前作の"In Time"に匹敵するCool FUNKナンバーだ。赤ん坊の鳴き声、奥方の声が入っているのは"Dance To The Music"などで展開するメンバー紹介のFamily版であろうか？A-6の"Loose Booty"はFUNK度高し。B-3の"Better Thee Than Me"はSlow FUNKナンバーだが、FUNK度は高い。B-4"Livin' While I'm Livin'はB-3の倍テンポのFUNKナンバー、こんなファストテンポのSlyは久々である、やはりSlyはかっちょいい！

Drs.のBillはこの後元Procol HarumのGuitaristであり、UKのJimi Hendrixフォロワーで有名なRobin Trowerのバンドに加入、『Long Misty Days』のRec.に参加する。これを追うようにBassのRustyもRobinのバンドに参加する。『In City Dream』（'77）のRec.に参加、驚くべき事にこのアルバム、The DramaticsやJohnnie Taylorのプロデューサーとして有名なDon Davisがプロデュースしている。確かに他のアルバムよりSoul/R&B、FUNK的アプローチになっている。しかし内容的には実験的要素が強く、前作『Long Misty Days』よりもかなり劣る。

もう一丁、Billは『Small Talk』と同時期に制作されたBobby Womackの『I Don't Know What The World Is Coming To』のRec.に３曲参加している。ちなみにSlyも１曲だけ参加している。

この後Sly Stone名義の『High On You』～新生Family Stone『Heard Ya Missed Well I'm Back』と出して、長年在籍したEpicを去りWarnerから二枚のアルバムを出す...


★今年発売されたトリビュートアルバム『Different Strokes By Different Folks』が他のTribute物と違うのは、各アーティストがただのカバーを演奏しているのではなく、オリジナルの音源を使用しながら、つまり『Slyと共演』しているところが素晴らしいのである。


さてさてSly Stone、今更復活して欲しいとは思わないが、グラミーアワードで元気なところを見れただけでもかなり素敵な事だ。みんなSlyを愛していると言うことが再認識されたよね、デビュー以来もうすぐ40周年を迎えるんだよ。どんどん若いファンが増えている。


VIVA！Sly...