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Snowmint

Ca m'est reste dans l'esprit.

[夜と霧」V・E・フランクル

2005-06-26 | BOOK
友人に勧められて読みました。
ユダヤ人精神分析学者がナチス強制収容所での体験を綴った物ですが、ありきたりの体験記ではありません。
心理学者として、収容所の様々な人々の心理状態を分析していくのです。
初版は1956年。すでに読まれたことのある方も多いと思いますが、これは改訂版です。
訳者も霜山 徳爾氏から、池田香代子氏に。

生きていることの意味について考えてしまう時がある。
それはもうやめよう。
誰も自分の苦しみの身代わりになってはくれないのだ。
生も死も苦しみも幸福も、すべて受け入れて生きていくしかない。
生きるとは、生きることの問いに正しく答える義務、生きることが各人に課す課題を果たす義務、時々刻々の要請を充たす義務を引き受けることにほかならないと、この本は教えてくれる。



ベルンハルト・シュリング「朗読者」

2005-06-21 | BOOK
ベストセラーの上位に挙がっている本や、巷で話題になっている本は、単純に欲しくなる。
読みたいと思って買うのだが、話題になっている本ほど、すぐには読まない。
なぜでしょう。
暫く、ずっと読まずに手元に置いておく。

べつに忙しくて読む時間か無いとかいうのではないのですよ。
だって他の本は読んでいるんですもの。
読んで無い本が沢山あるのに、一度読んだ本をまた何度も読んだりしてしまうのです。

新しい本は、もっともっと読みたい気持ちになるのを待つ。
熟すのを待つ果物のように。

最近、5年ほど前に買ったまま放って置いた本を読んだ。

これは今読む本だった。と、読んで分かった。
5年前に読まなくて良かった。

かつては素晴らしかった出来事が、そこに醜い真実が隠されていたというだけで、回想の中でもずたずたにされてしまうのだろうか?
苦しい結末を迎えてしまうと、思いでもその幸福を忠実に伝えないのか?
でも確かに幸せだったのだ。
幸せというものは、それが永遠に続く場合にのみ本物だというのか?
辛い結末に終わった人間関係はすべて辛い経験に分類されてしまうのか?
ベルンハルト・シュリング「朗読者」
人を許すことよりも自分自身を許すことのほうが難しい。


「イエスの遺伝子」マイケル・コーディ

2005-06-18 | BOOK
7年前に出版された本であるが、その頃もうすでに、科学的には現実不可能な話ではないと誰もが感じたのではないだろうか?
イエスの遺伝子が本当に存在すればね。
それでも倫理を持ち出されちゃったら、無理でしょう~。
発想的には「ダビンチ・コード」に似てるかも。
でもこちらの方が先。



「クロスファイア」宮部みゆき

2005-06-16 | BOOK
「鳩笛草」収録の「燔祭」の続編となる物語。
念力放火の能力を持つ女性青木淳子の生き方が、とても淋しく悲しい。
超能力者は孤独なのですね。

信じていた物がそうでないと知った時の辛さが胸に染みた。
裏切られたわけじゃない。嘘を付かれた訳でもない。
相手に心が無かっただけだ。
だけどきっと淋しかったのね、だったらやっぱり連れて行かなくてはと、二人で旅立てた彼女は、きっと幸福。

乙一「GOTH-リストカット事件」

2005-06-09 | BOOK
世界に殺す者と殺される者がいるとしたら、自分は殺す側だと自覚する「僕」。
その僕と、同級生の「夜」が犯罪を観光のように眺める6編。
同じ趣味を持つ二人だが同じ種類の人間ではない。
愛情ではなく執着だと言い切り、彼女の美しい手首を欲しがる様子も可愛らしい。

乙一「失はれた物語」

2005-06-08 | BOOK
ライトノベルという形態で発表された物を一般向けに作り直したもの。
最終話「マリアの指」のみ書き下ろし。
この中では「幸せは子猫のかたち」が好き。
幸せを願っているから幸せな夢を見るのだ。
そう有りたい。

山田詠美「風味絶佳」

2005-06-07 | BOOK
山田詠美の本は殆ど読んだことがなかった。
ずっと昔に手に取り、「なんか違う」気がして読むのを止めてしまった思い出がある。
その時の私には早かった、ただそれだけのことだったのかもしれない。
食わず嫌いは良くないね。
「風味絶佳」 美味しい本でした。
山田詠美という人は、なんて上手い小説家なんだろう!
登場人物が、皆魅力的だ。
彼女自身あとがきで彼らのことを「好き好き好き」と叫んでいる。
好きでなければああは書けない。
こんな人たちが本当に私の身近にいたら、
惚れてしまう。
美味しい物を少しずつ沢山食べた気持ちになれて、大満足。

宮部みゆき「ICO」

2005-06-06 | BOOK
プレイスティション2のテレビゲーム「ICO」の物語を元にノベラライズされたもの。
ゲームは知らないけれど、霧の城の内部は複雑でまるで迷路。
もしもやってみたら酔いそうだ。
宮部さんの作品は、「火車」「レベル7」「魔術はささやく」「クロスファイア」「鳩笛草」みたいな作品の方が好き。
その他は「R・P・G」と「理由」しか読んだことないけど・・・。
時代物の評判の良い人なので、今後読んでみたいです。

「思いわずらうことなく愉しく生きよ」

2005-06-03 | BOOK
江国香織の「思いわずらうことなく愉しく生きよ」を読んで感じたこと。

江国さんは、どうして殴られている人のその時の気持ちを知っているのだろうか。
どうしてあんなに的を得て、殴られている時の気持ちを書けるのだろう。
取材だろうか、それとも経験だろうか。

日本という裕福で幸せな国の中で、死ぬほど殴られた経験を持つ人は、あまりいないと思う。
少ないとは言わない。しかし、あなたの周りを見回してみて、そういう人が2,3人でもいるだろうか。
殴り合いの喧嘩ではない。無抵抗にただひたすらに、殴られるだけだ。
そんな経験をした人が、自分の友人にいるだろうか。
気が遠くなるまで殴られたことがあるというのは、ある意味、貴重な体験かもしれない。

殴られている時に恐怖は無い。痛みさえ感じられなくなってくる。
「あれ?もしかしたら死んじゃうかも」
なんて、頭の中で冷静に考えていたりする。
でもそれは、死に対する恐怖ではない。
髪を掴まれ床に打ち付けられながらも冷静に、「早く終わらないかな」などと考えている。
死ねれば終わる。
それでも相手も慣れたもので、死ぬまで殴るようなことはしない。
だから気絶を願う。気が遠くなれたらラッキー。

そんな気持ちになることを、どうして知っているんだろう。
しかし、この本の中に出てくる「麻子」という人は、死を願ってはいなかった。
そこが昔の私とは違うところだ。

「思いわずらうことなく愉しく生きよ」
すべての行き先はそこにある。


読んだもの日記

2005-06-02 | BOOK
乙一「暗黒童話」
最近、乙一ばかり読んでいる。
何故かというと、家に沢山あるから。
私はときどき、まるで中毒患者のように文字が読みたくなる。読めさえすれば内容など、どうでもいい。
子供の頃、図書館で本を選ぶということが面倒になり、物語の棚の端から順番に読んでいこうと決め、それを実行に移したことがある。自分にとって面白い本を探そうなどと思わなければ、その本がどんな内容であっても楽しめるものだ。
しかし、楽しめる文章であればそれに越したことはない。
今、また活字に飢えている。だったら図書館に行くか本屋に足を運び楽しめそうな本を選べばよいのだろうが、最近また何かを選ぶという事が、おっくうでならない。
だから家の書棚にあるもので、飢えをしのいでいる。
乙一は娘が集めていて、我が家には彼の著書の殆どがある。
その七割程度は借りて読んだが、私は彼の作品は短篇のほうが好きなので、これは未読だった。
意外な真犯人と結末に至る展開や、おどろおどろしさが乱歩のような感じもしたが、あそこまで暗くもなく、ある意味ハッピーなエンド。