小説:任侠戦士・極レンジャー 作:いのうえしんご
※この物語は、暴力団を離脱して堅気になり日々生活する中で、地域の平和のために立ち上がった、元やくざのヒーローの架空の物語である。
組を抜けた登は、地元で堅気となり、仕事についていた、当初なかなか、職もなく、苦労したが、わずかのお金を貯めて、小さな居酒屋を始めた、ちょうど居抜きのいい物件があったからである。その店も、常連さんが突き出し、元々、組員時代に、宿直などで料理当番をしていたから、料理には自信があった。もう刑務所に入って出てこれない親分もこれ好きだったなと、糠漬けを手でこねながら、仕込みをする日々が日常にかわっていた。
店ではテレビがつけっぱなしで、仕込みをしながら、焼き鳥を焼きながら、耳で聞いているが、最近、子供たちが巻き込まれるニュースが多く、女性が巻き込まれる事件なども後も経たない。しかも犯人とされている人は、テレビで見るかかぎり普通の人のように思えた。
今まで、悪もしたこともない人が、急に、事件を起こすことが疑問だった。しかも被害者は子供達や女性である。料理を作りながら、登は憤った。元々、学生時代からも、ケンカとなれば、いつも強いやつと喧嘩を好んでいていた登は、今の弱いものに皺寄せがきている風潮が違和感を感じていた。
そんな中、登が地元のスーパーに買い出しに行っているときに、バッタリと、組時代にお世話になっていた先輩にあった。見ると作業着を着ていて現場帰りのようだった。
「お元気ですか。その格好は」
「いやー、俺も組をやめて、今では構内で仕事をしとるんよ。今はその帰り」
現役時代は、ターミネーターと言われて、喧嘩をさせれば、相手なしと言われていた先輩のその作業着姿もまた似合っていて、話が弾んだ。
「お前は?」
「実は小さな店してるんですよ。先輩来ませんか。せっかくなんで奢ります」
開店前に店に来た先輩に、手際よく、生ビールを出して、ささっと先輩が好きだった冷奴を出した。
「へー、お前も頑張っとるんよね」
登は他のお客さんとの接客もしながら、久しぶりにあった先輩との話に花を咲かせた。先輩もまた、最近の事件などは気になっていたらしく、うちらヤクザがおらんようになって、街が平和になると思ったら、そうもなっとらんみたいやね。
なんか、弱いもん、弱いもん、に皺寄せがくるちゅうんは、なんか、組だけの問題やのうて、社会全体の問題やないかね。