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福島原発事故、二大事故との違い(1)

2011-03-20 14:38:05 | 東日本大震災
福島原発事故、二大事故との違い(1)
(ナショナルジオグラフィック)
[ 2011年3月18日17時 ]
 
 3月11日の東北地方太平洋沖地震と津波の影響で、福島第一原子力発電所で爆発事故が発生し、事態収束を図るため懸命の作業が続けられている。原発事故といえばスリーマイル島とチェルノブイリが双璧だったが、福島原発は両者に匹敵する深刻な事態となる可能性があり、いずれは三大原発事故として記録に残るようになるだろう。
 
 福島第一原発の損害がどの程度深刻になるか現時点で見通しは立っていない。15日の時点で6基ある原子炉のうち3基で水素爆発が発生。さらに、2基で格納容器が損傷、4基で使用済み核燃料が過熱し、極めて危険なレベルの放射線が検出された。構内に残って作業を続ける作業員50人が被曝の危険にさらされるなど、事態は深刻化している。
 
 しかし、1979年にアメリカ、ペンシルバニア州ハリスバーグ郊外のスリーマイル島原発で起きた事故や、1986年のウクライナ北部チェルノブイリ市の原発事故とは大きく異なる点が既にいくつかわかっている。
 
◆原子炉の種類
 
 1970年代に営業運転を開始した福島第一は、計6基の沸騰水型軽水炉(BWR)がある。BWRは通常の水を使用する軽水炉の一種で、H2Oの代わりに酸化重水素(D2O)を使用する重水炉と区別されている。スリーマイルの軽水炉は、加圧水型原子炉(PWR)という別のタイプだった。
 
 電力業界の非営利研究機関である米電力中央研究所(EPRI)の原子力担当副所長ニール・ウィルムシャースト氏によると、どちらの原子炉でも水が2つの役割を果たしているという。炉心で発生した熱を取り出す冷却材、そして核分裂反応で放出される中性子の速度を下げる減速材の働きである。
 
 加圧水型では水に高い圧力をかける。炉心が加熱した冷却水を蒸気にすることなく(水の方が蒸気よりも冷却効率が高いため)、沸騰水型よりも高温で運転する。炉心の温度が高くなり、熱効率が上がるのである。一方、沸騰水型は加圧水型に比べ低温のため、原子炉の構造が簡単で、部品が少なく済む場合が多い。
 
 チェルノブイリは、黒鉛減速沸騰軽水圧力管型原子炉(RBMK、ロシア語名:Reaktor Bolshoy Moshchnosty Kanalny)である。軽水炉と同様に冷却材として水を使用するが、減速材には黒鉛が使用されていた。イギリスのロンドンを拠点に活動する原子力業界の国際団体、世界原子力協会(WNA)によると、黒鉛の減速材と水の冷却材を組み合わせた原子炉は、ロシアで運転中の数台しかないという。
 
 アメリカでは原子力発電所のほとんどがBWR型かPWR型の原子炉を使用している。「安全性に大差はない」と、ウィルムシャースト氏とEPRIは同意見だ。「どちらもそれぞれ自己制御性(負の反応度フィードバック)を備え、炉内の温度が上昇すると自然に核分裂反応が弱まり、出力が減少する」とウィルムシャースト氏は説明した。「しかし、RBMK型は正の反応度フィードバック特性を持つ。温度が上昇すると出力が上がり、さらに温度が高まるため、原子炉の暴走が生じやすい」。
 
◆事故の原因
 
「福島原発の事故では、津波が直接の原因となった可能性が高い」と同氏は指摘する。設計通り、地震の揺れを検知して運転を自動停止したが、約1時間後に大津波が押し寄せ、すべての電源を喪失した。地震で冷却ポンプの動作を保つ外部電源が停止、冷却系への電力供給を担う非常用ディーゼル発電機は津波をかぶり故障した。非常用バッテリーもわずか8時間で切れたため、移動式発電機が搬入されている。
 
 アメリカの科学者団体、憂慮する科学者同盟(UCS)の原子力安全プログラム(Nuclear Safety Program)責任者を務めるデイビッド・ロッシュバウム氏(David Lochbaum)氏は、「一連の災害と事故との因果関係を判断するのは時期尚早だ」と指摘する。同氏はアメリカにおいて、福島第一と同じゼネラル・エレクトリック社(GE)製の3つの原発で技術者として働いた経験を持つ。
 
 1979年のスリーマイル島原発事故に関する通称ケメニー委員会の最終報告書では、「機器の欠陥が事故の発端ではあるが、人為的な操作ミスが決定的要因となった」と述べられている。作業員が非常用冷却系統を誤操作により停止してしまったため、深刻な事態に進展した。もし作業員(または監督者)が事故の初期段階で非常用冷却系統を作動させていれば、あれほど重大な事故にはならなかったと同委員会は見ている。
 
 一方、チェルノブイリでは動作試験が行われていた。「計画自体に不備があり、実施時にも複数の規則違反があった」とウィルムシャースト氏は言う。国際連合(UN)によると、予期しない運転出力の急上昇により蒸気爆発を起こし、原子炉の蓋が破損。その結果、溶融した燃料と蒸気が反応してさらに激しい爆発が起こり、炉心も溶融、建屋もろとも爆発炎上したという。
 
◆問題の究明
 
 スリーマイルとチェルノブイリ以降の数十年で、何が原子炉内で起こっているのか、原子力発電に関する情報が公開されるようになった。
 
 スリーマイル事故当時に米原子力規制委員会(NRC)の委員だったピーター・ブラッドフォード氏は今週、「スリーマイルでは、事故3日目までに公開した情報のほとんどが不正確だった。燃料溶融の状況や1日目に炉内で発生した水素爆発の事実すら、何年もの間公表されず、情報がまったく闇に葬られていたのだ」と語った。
 
 前述のケメニー報告書では、警報システムの不備を問題に挙げている。スリーマイル事故の最初の数分間、100以上の警報が鳴り響いたが、重要な信号を選択して通知するシステムは確立されていなかった。「状況が急速に変化する事故現場は混乱の極みに陥る。問題は、その状況下における人間と機械との相互作用に注意がほとんど払われていなかったことにある」。
 
 一方、ブラッドフォード氏は次のように指摘する。「コンピューター化と情報伝達の向上により、少なくとも理論的には、日本の当局者は事故の状況をはるかに詳しく把握できたはずだ。だが、スリーマイルにはない地震と津波が相次ぎ、パニックに陥ったことは間違いないだろう」。
 


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