271828の滑り台Log

271828は自然対数の底に由来。時々ギリシャ・ブラジル♪

スプリングとリンク(その3)

2007-11-13 04:16:33 | 遊具
スプリングを使った遊具と前述の木馬との大きな違いはそれらの系の重心の軌跡です。スプリングを用いた遊具では図に示すように地上から鉛直方向に立てたスプリングに質量が集中した系と看做せます。

バネが外力を受けて撓むとき、バネの大きな変形は初等関数では表現できず、楕円関数で表されることが知られています。しかし工学的には図に示すようにゼンマイと棒の先端に取り付けられた質量の系と近似しても大きな誤差は生じません。この場合、質量Mが動く軌跡は円周上にあります。

ぜんまいの中心から質量までの距離をrとし、質量Mが丁度鉛直上方にある場所を原点と仮定します。回転方向に力を加えて角度θだけ回転したとすると巻き戻す方向に弾性力のモーメント
N(θ)=-kθ
が働きます。負号は、ゼンマイを巻いた向きと反対方向に力が働くことを意味し、kは比例定数です。そしてゼンマイを角度θだけ巻いた時の位置エネルギーは次の式で表せます。
V1(θ)=kθ^2/2
一方、質量 はゼンマイに取り付けられた棒の角度によって位置エネルギーが変化し、これは次のように表すことが出来ます。
V2(θ)=-mgr(1-cosθ)
系全体の位置エネルギーは従って両者の和で表せます。
U(θ)=V1(θ)+V2(θ)
この系を考察するために、例として2.5N・m/度のバネ定数のゼンマイ(捻りバネ)を取り上げます。SI単位系では約143N・m/ラジアンです。地上にこのゼンマイを取り付け、長さ0.5mの腕の先に質量15kg、30kg、60kgを取り付け、鉛直軸から測って時計方向を正、反時計を負とします。このときバネのポテンシャルエネルギー、それぞれの質量を付けた腕のポテンシャルエネルギーをプロットすると以下の図になります。

次にバネとそれぞれの質量を持った棒を合成させた系全体のポテンシャルのグラフを描いてみると以下のようになるでしょう。
15kgの場合。

30kgの場合。

そして60kgの場合。

上のグラフから分かるのは体重15kg程度の幼児ならば大きく振ってもバネの復元力が勝り、原点に復帰出来ますが、現実的には幼児がこの系において大きな角度まで振らせることはありえないでしょう。30kg程度の児童の場合、復元力が殆ど働かないので揺らして遊ぶことは困難になります。
大人の体重を60kgとすれば、グラフから明らかなように横倒しなった状態でポテンシャルが最小になるので、この状態が一番安定ですが、これはとりもなおさず「大人は使用禁止」を意味します。

一般には幼児の体重を想定してスプリングを設計しますが、公園等の公共の場所では大人の使用を規制することが難しいことはYouTubeの動画で分かります。大人が乗った場合、バネの素線に想定以上の応力が加わることになりますが、そもそもコイルスプリングは屈曲させて使用することを目的としていないのです。使用頻度が高い場合には金属疲労からバネが破損する事故が後を立たないのです。目視で亀裂等を発見することが難しく、安全面から言ってこれがスプリング遊具の最大の欠点です。

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2 コメント

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公園で・・・ (sachiko161)
2007-11-13 10:01:04
公園に行くたびに思うのですが
『この遊具は大人は使用しないほうが・・・』と思うことが多々あります。たぶん子供が使用して安全に設計されているだろうに、高校生くらいの子達がもの凄~く、揺らしたり、回したり、跳ねたりとしているところをよく目にします。
公共の場にある遊具だけに楽しく使えるように大人がしっかり指導できると良いですね。
公園ではマナーを守り大人も子供も楽しく過ごせるよう気を付けます!
でも、子供が揺らしたりしてるのを見ると、広い公園で開放感も手伝い、つい一緒にはしゃぎたくなってしまうんですよねぇ・・・
遊具の設計とは奥が深いのですね・・・
幼児向けに作っても絶対に大人も使ってしまいますものね・・・
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子供のココロ (271828)
2007-11-14 06:31:22
sachiko161さん おはよう

遊具は大人にも「面白そう」と思わせなければならない宿命を負っています。遊ぶのは子供ですが、お金を出すのは大人ですからね。

遊具は概ね3歳から12歳までを対象として設計・製作されますが、公園に設置されたらどうなるか分かりません。それも考慮して作るのは難しいですね。子供は遊び、大人は見守るのが原則です。
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