http://gendai.ismedia.jp/articles/-/44884 災害の記憶をいまに伝える日本全国「あぶない地名」
「きれいな地名」は要注意
自由が丘をはじめ、日本全国には「○○が丘」や「○○台」、あるいは「希望」や「光」といった明るい意味の単語を使った地名は数多い。そのほとんどは近年つくられたばかりの新興住宅地。ところがそうした場所は、古い地名が災害と関係していることがしばしばある。
公園や橋の名に痕跡が
戸建ての住宅が整然と立ち並ぶ、愛知県名古屋市天白(てんぱく)区もそうした、「蛇地名」をもつ地域のひとつ。『天白区の歴史』(愛知県郷土資料刊行会発行)には、〈蛇が多くおって、土砂を取るために崖を崩すと、蛇が群がって落ちてくる〉と記されているように、この地区は土砂崩れを示唆する「蛇崩(じゃほう)」という地名で呼ばれていた。
区役所総務課を訪れ確認したところ、確かにその通りだという。
区内を流れる天白川によって、天白区は何度も土砂災害に遭っている。'00年に起こり、のちに内閣府が「激甚災害」に指定した「東海豪雨」でも川が氾濫。区内全域に土砂濁流が押し寄せ、2名の死者が出た。
長年、山津波に襲われ続けてきた歴史をもつ長野県南木曽(なぎそ)町。'14年7月9日にも大規模な土石流災害が発生。JR中央本線の鉄橋が流されるなど、その被害は甚大だった。
被災地の中でも、23人という多くの犠牲者を出したのが長崎県長崎市鳴滝(なるたき)だった。この町はかつて幕末期に出島で医師を務めたドイツ人・シーボルトが開設した鳴滝塾があった場所として有名で、現在も観光客で賑わう。だが実は水害多発地帯としての一面もある。
川崎市発行の『川崎地名辞典』には〈「蟹」は、「剥落しやすい土地」を示す「カニ」から来たもの〉と、その由来が記されている。それを証明するように、'89年8月にこの蟹ケ谷で崖崩れがあった。
神奈川県横浜市中区野毛(のげ)町は、野毛山動物園を頂点とした丘陵地となっている。町は起伏が激しく、道路脇の急傾斜は、今にも崩れそうな状態をやっと抑えているかのように舗装されている。
'14年10月、この町の一部で崖崩れが発生して寺院に流れ込み、僧侶が1名亡くなった。