ロキソニンは腫れや痛みをやわらげ、熱を下げる効果があり、関節リウマチや変形性関節症、腰痛、歯痛の鎮痛・消炎や急性上気道炎(いわゆる“かぜ”)の解熱・鎮痛などに用いられます。副作用としては、消化性潰瘍や血液異常、肝障害、腎障害、アスピリン喘息などがあります。
この中の血液異常、肝障害、腎障害は、どの薬の副作用にも記載してあるもので、ロキソニン自体に特に多いわけではありません。
アスピリン喘息というのは、ロキソニンに限らずボルタレンやバファリンなどの非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDS)で起こる可能性がある喘息症状のこと。解熱鎮痛剤に対する過敏症状で、副作用として喘息発作がおこることがあります。
消化性潰瘍は解熱鎮痛剤に多い副作用で、消化管に粘膜障害をきたし潰瘍になることがあります。多いのは胃や十二指腸ですが、小腸や大腸にも起こります。消化管全体を含めた消化性潰瘍は0.05~0.1%未満と報告されています。
今回、厚生労働省の指示で「重大な副作用」として追加されたのは、「小腸・大腸の狭窄・閉塞」。簡単に言うと「腸閉塞」です。
メカニズムとしては、そもそも解熱鎮痛剤は消化性潰瘍を起こす危険性があります。潰瘍を形成し、腸が盛り上がったり変形したりすることで、狭窄や閉塞をきたす可能性があると考えられます。
厚生労働省は、2012年以降、医療用ロキソニンなどに含まれるロキソプロフェンナトリウム水和物という成分を摂取した5人が腸閉塞になり、因果関係が否定できないとしています。
5人の腸閉塞が多いかというと、そうとも言えません。ロキソニンは医療機関ではもちろん、ドラッグストアでも購入できる薬です。第一三共ヘルスケアの「ロキソニンS」だけでも4年間で3600万個も販売されています。医療機関でも、ロキソニンは処方される薬の上位に入るぐらいよく処方されている薬です。
腸閉塞が起こるしくみから考えても、消化性潰瘍から腸閉塞に至る可能性は非常に低いと考えて良いでしょう。厚生労働省も副作用の発生頻度は「まれ」に起こるレベルとしているようです。実際の現場で問題になることが多いのは、消化性潰瘍による腸閉塞よりも、潰瘍出血です。
一般的にロキソニンで注意すべき副作用は、腸閉塞そのものでなく、消化器症状です。
ロキソニンで腸閉塞になる可能性は低いのですが、ロキソニンを含めた解熱鎮痛剤は消化管の粘膜障害をきたしやすいという特徴があります。副作用として生じる腹痛、胃部不快感、食欲不振、悪心・嘔吐等の消化器症状をきたす確率は2.25%と比較的高値です。
長期に解熱鎮痛剤を使用する場合は、消化管の粘膜障害から消化性潰瘍をきたす可能性があるので、胃薬を内服するなどの対応を考えねばなりません。
ちなみに、ロキソニンは解熱鎮痛剤の副作用である胃腸障害を軽減するためにプロドラッグ化された薬であり、解熱鎮痛剤の中で特に消化器症状が強い薬というわけではありません。