https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190225-00010001-finders-sctch
東京都足立区の病院で2016年、手術後の女性の胸を舐めたなどとして、準強制わいせつ罪に問われていた40代の男性医師に2月20日、東京地裁で無罪が言い渡された。裁判長は「女性が麻酔の影響で、わいせつ行為を受ける幻覚を体験した可能性がある」と述べ、術後せん妄の影響を指摘した。
術後せん妄とは、麻酔薬などの影響により手術後に一時的に伴う意識障害のことで、幻覚が生じることもあるという。
この判決を受けて、日本医師会の今村聡副会長は「術後の経過でこのような症状が生じる場合があることを知っておいてほしい」と語った。
今回の事件で初めて「術後せん妄」という言葉を知ったという人も多いだろう。実は医療現場においては日常的に起こる症状だという。SNSには医療関係者から多くの声が上がった。
救急医療センターに従事する薬師寺氏は、救急科でせん妄の患者を毎日見るといい、「せん妄対策についてカンファレンスで話題にならない日はない」とコメント。
医師の「えつかる」氏は日々、患者の術後せん妄に医師と看護師が苦労していると訴えた。一般層までに伝わっていない問題がそこにはあるようだ。
ライターとしても活動する外科医けいゆう氏も、術後せん妄を「ありふれた事象なのに社会的には認知度が低い」とし、「どんな患者さんにも起こり得るため、私が手術を受けた後に起こしていたかもしれないし、皆さんも、皆さんのご家族も、誰でも起こす可能性はある」と注意を促した。
一方、家族や知人が術後せん妄になった人からの体験談も、SNSに寄せられた。ある人は母親が術後せん妄で、亡くなった父親が老化で叫んでいる幻覚や、病院の職員がみんな薬で妄想に取り憑かれたことを明かした。
ある人の知人は、飼い犬が逆立ちして壁を歩いていたという幻覚を見た告白。こんなありえないシチュエーションなのにも関わらず、現実味を感じたというから驚きだ。
さらには、自身が術後せん妄を経験した人からの声も寄せられた。やはり色や湿度にいたるまではっきり覚えているほど、リアリティを感じたという。しかし、病室ではありえない出来事だったと後々感じたとのこと。
今回の事件を鑑みて、患者に対し、事前に術後せん妄に関して説明をする必要性を感じた。既に医療機関によっては実施しているところもあるようだ。術後せん妄の可能性をあらかじめ家族や友人と共有し、もしものケースに備えるのが現状ベターではないだろうか。