オランダ中西部に建つユトレヒト大学には、数々の難事件を解決に導いた超能力者に関する膨大な記録がある。研究者は超心理学者のヴィレム・テンへフ教授、そして、その研究対象がジェラルド・クロワゼットだ。
彼は透視能力を持つ上、物体に触れるだけで、それに関する様々な情報を読み取ることができる「精神感応能力者(サイコメトラー)」でもあった。クロワゼットは何か国もの警察に協力して行方不明の捜索にあたり、一方で研究者たちのテストなどにも応じていた。研究対象にされることを嫌がる超能力者たちの中にあって、彼は積極的な態度でテストに臨んでいたと云う。
而も、自分の能力が必要な時には直ぐに応じられる様にと、1965年にはわざわざユトレヒト大学の近くに居を移しているのである。大学にはクロワゼットが手掛けた何百件もの記録が残されているが、その能力の高さが窺える例として、ある失踪事件を紹介しよう。
1967年2月19日、イギリスのスコットランドで十七歳の少女パット・マッカダムが行方不明になった。パットの失踪から3年後、彼はその行方調査を依頼された。依頼者がパットの写真を見せると、クロワゼットは「川の土手にモミの木と露出した木の根がある風景が見えた」と述べ、川の水が土手を浸食している様子など、細部に渡る風景描写をしたのである。
そして、近くに灰色の手すりの橋が架かっていること、その橋を渡ると、白い柵に囲まれた一軒のコテージが建っていることを付け加えた。更に後日、パットの愛用品であった聖書を手にするや否や、彼女がすでに死んでいることを告げたのだ。彼の透視によれば、パットの遺体は川の土手にある木の根の下の空洞に放り込まれており、その場所の目印は、脇に手押し車と自動車の一部がある建物だと云う。実際、クロワゼットが透視したと見られる現場近くには、鶏小屋として使われていたタイヤの無い古い車と、手押し車が立てかけられていた。驚くべきことに、クロワゼットはオランダに居ながらにして、何百マイルも離れたスコットランドの現場を鮮明に透視したのである。残念ながら、パットの遺体を発見するまでには至らなかったが、彼の持つ能力の正確さを世に証明した事件と謂えるだろう。
実はクロワゼットは日本でも透視に成功している。1979年5月、彼がテレビ番組の企画で来日したその前日、千葉県で一人の少女が行方不明になった。警察が大規模な捜査を行なったにも係らず、何の手掛かりも得ることができなかった。しかし、クロワゼットは少女の写真を見ただけで、「明日の朝、少女の死体が発見される」と告げたのである。その言葉通り、翌日、ダムに浮かんでいる少女の死体が見つかった。
彼は同年12月にもテレビ番組の企画で来日している。帰り際に、日本人スタッフが「また来て下さい」と声をかけたところ、彼は「もう直ぐ癌で死ぬから無理だよ」と返事をしたと云う。
そして、その言葉は現実となり、1980年7月20日、クロワゼットは七十一歳の生涯を終えた。果たして、彼は自分の死期までも見通していたのだろうか。
世界と日本の怪人物FILE
科学の常識を覆した超能力者たち