『前賢故実 県守』
岡山県高梁川のミズチを多治比懸守(県守)が退治したと伝わる。(国立国会図書館蔵)
みずち(蛟・虬・虯・螭)古くはミツチと清い音。
ミは水、ツは助詞、チは霊で、水の霊の意。想像上の動物。
蛇に似て、四脚を持ち、毒気を吐いて人を害するという。虬龍(きょうりょう)。
ミは水、ツは助詞、チは霊で、水の霊の意。想像上の動物。
蛇に似て、四脚を持ち、毒気を吐いて人を害するという。虬龍(きょうりょう)。
『広辞苑』
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予(松浦静山)の家来某の話であるが、ある夜、小舟に乗って海上で釣りをしていたところ、
月があり風も涼やかであったが、白岳(長崎県対馬市、518㍍)方面を遠望していると、
山頂から白雲が生じ流れ出て、やがて真上に到り、茶碗状にかたまった。
その側にまた白雲が生じたかと見る間に、黒い雲が湧き出て、次第に東北に伸びて行ったが、
忽ち篠突くような雨が降り出し、海面も荒波となった。
予が考えるところ、これこそミズチのせいである。
ミズチは世に言うところの雨龍で、山腹の土の中に住む。
また、世間で宝螺(ほら)ぬけといって、あちこちの山腹が急激に震動して、
雷雨のうちに何物かが飛び出すことがある。これを土中のほら貝がでるのだというが、
誰もそれを目撃した者はない。それはミズチが地中から出るのだともいわれている。
淇園先生(柳沢里恭・さとたか、1704~1758)の話によると、
ある武士が友人宅に泊って、庭を見ていたところ、竹垣の脇から白い煙状のものが生まれ、
見る間に一丈(3㍍余)の高さに立ち昇って、遂に一団となったという。
また飛び石の上が三、四尺(1㍍ほど)濡れて雨が降ったかのように見える。
その人は不思議に思って、眼を凝らし竹垣の脇を見詰めていると、
藪の中にトカゲがいる。このトカゲは大きく、四つ足で、ミズチの一種であって、
つまりこの種属は雨を起こすものである、との説であった。
『甲子夜話』 巻二十六
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江戸時代 怪奇事件ファイル