シモン・マグスは、古代キリスト教最大の異端、グノーシス派の生みの親とされている。
「マグス」とは名字ではなく、「魔術師」と云う意味の言葉で、自らを「ファウストゥス(祝福される者)」と名乗ったと云う記録からルネサンス期の「ファウスト」伝説の原型になったとも謂われる人物だ。
シモンはキリスト教の使徒たちと同時代に生まれ、『新約聖書』にも登場する。
サマリアで魔術師として活動し、多くの信者を集めていたシモンは、使徒パウロとヨハネが宣教の為にサマリアを訪れた際、彼らが自らの手で精霊を授ける場面を目の当たりにし、金でその力を買おうとした。
この行為をパウロに叱責されるのだが、このエピソードから、後に「聖職売買」を表わす「シモニア」と云う言葉が生まれたと云う。
シモンに纏わる記録は、他にも断片的に残されている。
例えば、石をパンに変える、岩を通り抜ける、空を飛ぶ、動物に姿を変えるーーーなど、様々な魔術を使う人物として描かれているのだ。
しかしその多くは、彼の教義を敵視したキリスト教側の記述であり、事実かどうかは、その実在の真偽からして判っていない、伝説的な魔術師なのである。
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