『営繕かるかや怪異譚 (角川文庫)』
主人公は多分怪異そのものといっていいのではないか。「奥庭より」「屋根裏に」「雨の鈴」「異形のひと」「潮満ちの井戸」「檻の外」の短編集だが、共通に登場するのが「営繕かるかや」の尾端(おばな)という青年。だから、もちろん、タイトルにもなっているし主人公ではあるのだが、登場するのは各編の最後の最後である。興味深いことに、尾端青年は、怪異現象を消滅させるのではなく、家屋や敷地内の施設をすこし営繕をして、現象を軽減させ、各編それぞれのメインキャストにも共存をすすめるといった形で解決するのだ。この優しい解決策はとてもいいと思う。かれは、ゴーストバスターではなく、エクソシストでもないのだ。まさに日本的鎮魂とも言うべきか。鎮魂もおそらくは、完全に押さえ込むのではなく、何かの拍子に魂はさまよい出てしまうのだ。