抜かない歯医者のひとりごと

歯の健康は全身の健康につながる。渋谷で開業中の保存学認定医が、なるべく歯を抜かない治療にまつわるトピックを語ります。

医療格差とボランティア

2012-07-21 | 歯科治療

《常識のない人の唱える平等は悪平等である。》

耳を貸す事はないし、むしろ、多くの真面目な人の為にも厳しく律する事が肝要です。」
 と、いう主旨の事を作家の曽野綾子氏が書いてました。

 大賛成です。

 「国旗に礼を正さないのは、日本のみならず、世界の国、人々に誠に無礼であり、非常識なのです…。」
と、曽野綾子氏は書いてます。

  その通りです。

オリンピックで、世界選手権で、日本人がメダルを手にしたりすると、その活躍を心から応援し、感動、感激、時には感謝します。スポーツは平和の象徴です。いい意味での素直な純粋な愛国心です。心を明るくします。(特に、今の政治と閉塞感では。)

曽野綾子さんは、ボランティアについても言ってます。

困ってる人を助ける時は、何が必要か調べて、《直接》渡すことだ。
 金を寄付してもきちんと使われてるか不明だ。

 銀行だかマスコミだか、街頭に立って、義援金を募っている者に金を寄付しても無駄だと…。

 まさに正統なキリスト教、宗教心の持ち主だと思います。

 実際、曽野綾子さんは、80歳にならんとする今も、アフリカに行き、《直接》ボランティア活動をしてます。

 黒柳徹子さんの、ファーストクラスでアフリカに行き、アフリカの子供達と一緒に写真を撮って来て、ファーストクラスで帰るのとは格が違います。

 別に、ファーストクラスの利用でも、グリーン車でも、豪華客船でも、全くかまわないと思いますが…。

 黒柳徹子さんのは、ただひたすら上から目線の偽善で、深みも思いやりもなく下品です。(本人は、能天気にその自覚もないのでしょうが。)

 曽野綾子さんと比較するのも曽野綾子氏に失礼かもしれません。

 ただ、曽野綾子氏が、こう続けたのです。
 「アフリカの国々は、冷暖房も下水道もない所、電気のない所もいっぱいあります。勿論、飢え、簡単な薬もない為に多くの人、子供達も死んでます…。…。
勿論、学校もない、教育設備もなく、字も読めず、幼くして働いている子供達はそれはもう一杯居ます。

 それらアフリカの貧困国と比べれば、日本は何と住みやすい良い国でしょう。…そう思わないといけません。」
と、断言します。

 私はここで、何となく違和感を覚えたのです。

 曽野綾子氏のことは、今も尊敬していますが。
 頭も良く、努力家で才女で人格者です。

こんなとき、石井光太という若い、まだ三十代の作家の言を読みました。
 彼は、イスラム圏の最貧国のルポルタージュを書いてます。(東日本大震災のルポも普通の報道ではしない事をきちんとルポしています。)

 彼は言います。
 「最貧国では少女が多く売春している。それもほんの少しの食いぶちのために…。考えられない位安く。…。」

で、石井氏は続けます。
 「と言って、これら最貧国に比べ、日本はいい国だと思えというのは違うと思います。比較しても意味はないし、そういう問題とはどこか違うと思います。」

 この石井氏の言は、調べると曽野綾子さんの記事より相当前に述べてます。だから当然、曽野氏への反論ではありません。

 私はこの石井氏の発言を偶然見つけて、何かすっきりし、曽野氏への違和感が少しとけた気がしました。

 曽野氏の方は更に別の所で、自身の目(眼)の病(やまい)に言及し、日本の医療でなかったら自分は失明は勿論、生きていられなかったかもしれない旨を述べてます。-勿論、良かった思います。

 ただ、曽野氏とは違う視点から私は思うのです。《同じ日本》で、《同い年の三十代の男性》が、(白血病にも種類があるのですが)、《同じ白血病》で、片や、保険外の特効薬のおかげで元気にスポーツもでき、社会復帰し、片や、その薬を買えず、死亡した現実を見ると、(二人共、家庭を持ち、幼い子供が居ます。)
 かつ、死亡した男性は真面目にラーメン屋を営み、人並みの収入もあったのです。

 この医療格差は、悲惨です。命に金はかかるとは言え、問題があると思います。

 石井氏は《絶対貧困》という本も書いてます。

 同じ日本でのこの命に直結する《医療格差》は酷すぎます。

 私は、石井氏の《絶対貧困》という書は読んでませんが、同じ日本でのこの格差は《相対貧困》というのかなとも思えます。

 働ける若者に生活保護の受給金など渡さず、白血病の特効薬を医療保険で賄えるようにしなければいけません。

 石井氏の言うように、最貧国を見て、日本をいい国だ思え。というのはやはり問題が違うと思います。

 同じ日本での《この医療格差》では、日本はいい国だとは言えません。

 歯科で言うと、インプラントは保険外です。
 貧乏な人は出来ません。
 これはいいんじゃないですか。少し言わせてもらうと、
 高い金で、インプラントをして、自分の命を縮めてるんですから。

 因みに、日本のいいところは《歯を残す》のに保険が効く事です。

 欧米では金がない人は、若くてもみんな、ちゃちな取り外しの入れ歯か、歯抜けのままですからね。

 ただ、《歯を残す》治療技術-スキルの難しさ、ストレスに見合う、保険の給付ではないですね。
  安すぎです!

 私ですら、抜いたら楽に儲かるのに、と思う時がしばしばです。

 特に、(感謝しろとは云いませんが)痛みがとれると歯に大きな穴が空いたままでも無断で来なくなる患者に出くわすと…。

 何の為に《歯を残す治療》をしたのだろう。そのままで他の医院に行ったらすぐ抜かれるし、私でも、抜かざる得ないかもしれないし…。
 あるいは、自然に抜けてくるか…。

 治療しても虚しくなります。

 こういう人は、抜けば痛みは取れますとばかり、突き放したくなります。

 ただ、真摯に、(他のところで、大学病院も含めて、抜くと言われた歯を残すべく)通院してくれる人には、コスト云々でなく、歯科医として、医者のはしくれとして、喜びも有るのも確かです。

 しかし、一般論として、間違いなく歯医者は冷遇されてます。

 特に誠実な多くの歯医者の嘆きは深刻です。

こうしてみると、日本は決して良い国とはまだ到底言えません。
特に今は《政治が貧困》です。


上記、曽野氏にはやはり老人の諦念があり、若い石井氏には、諦めない希望があります。

こういう若い人が居るのは、まだ日本も捨てたものでもありません。

私も年取りましたが、希望を持って生きていきたいと改めて強く思いました。
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