県下トップの公立高校に進学しそこでも努力を続けてトップクラスにいるできのいい兄を持ち、外に女を作って出て行った父をさほどは責めずに非常勤公務員として市役所に勤めて福祉関係の業務に携わる母にも兄と違って期待されていないと、勝手に僻んで自分だけが不幸だとやさぐれる視野の狭いジコチュウの中学3年生柏木悠人が、夜の公園でブランコに座り沈んでいる少女富沢朱音に関心を持ち夜の公園に通うようになり、朱音が父の単身赴任中に母が病気となったために幼い妹を抱えて家事と看護に追われていることを知り、朱音や周囲の友人たちが自分よりも大変な苦労と思いをしていることを知っていくという展開の青春小説。
親の病気等のために家庭責任を負わされている子どもたちを「ヤングケアラー」と呼び、その実情と支援の必要性を訴えるため、苦労している朱音ではなく、むしろ恵まれた境遇にいながら僻んでいるジコチュウ少年の視点で語らせるというところが巧みです。
文庫版のあとがきで、作者は、「『with you』はヤングケアラーをテーマにした物語だと見なされることが多く、それは間違っているわけではないのですが、あえてどんな作品かと一言で言うならば、中学生を主人公とする恋愛小説です」(233ページ)と、もっと恋愛小説として読んで/評価して欲しいと訴えているのですが、ちょっとそう読むには直球の問題提起に寄っていて固い印象があります。恋愛小説と読むよりは、僻み少年の成長物語と読む方がよさそうです。
濱野京子 講談社文庫 2022年7月15日発行(単行本は2020年11月、くもん出版)
親の病気等のために家庭責任を負わされている子どもたちを「ヤングケアラー」と呼び、その実情と支援の必要性を訴えるため、苦労している朱音ではなく、むしろ恵まれた境遇にいながら僻んでいるジコチュウ少年の視点で語らせるというところが巧みです。
文庫版のあとがきで、作者は、「『with you』はヤングケアラーをテーマにした物語だと見なされることが多く、それは間違っているわけではないのですが、あえてどんな作品かと一言で言うならば、中学生を主人公とする恋愛小説です」(233ページ)と、もっと恋愛小説として読んで/評価して欲しいと訴えているのですが、ちょっとそう読むには直球の問題提起に寄っていて固い印象があります。恋愛小説と読むよりは、僻み少年の成長物語と読む方がよさそうです。
濱野京子 講談社文庫 2022年7月15日発行(単行本は2020年11月、くもん出版)
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