伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

ニッポンが変わる、女が変える

2017-05-10 00:13:14 | 人文・社会科学系
 福島原発事故前は、原発については「これは触れないでおこう」と戦略的に黙っていた(14ページ)という著者が、原発再稼働に向かう政権への危惧、特に橋下維新の勢力拡大とその後の総選挙での安倍政権の成立・暴走に対する危機意識/絶望を背景に、各界の先行者と著者が評価する女性たちと、3.11後の日本社会のあり方を語る対談集。「婦人公論」2012年4月号から2013年3月号までの連載のため、前半は、民主党政権のだめさ加減と橋下維新のポピュリズムへの危機感、後半は原発推進戦犯の政権復帰と安倍政権への危機感が表れています。2013年10月の単行本出版から3年余を経て出版された文庫本では、12名のうち8名から「文庫化に寄せて」が寄稿され、その後の状況に対するフォローと感想が記されていて、そこも対談者の思いが表れていて感慨深い。
 第8章の歴史学者の加藤陽子さんとの対談では、畑村洋太郎東京大学名誉教授の失敗学も今回は難しかったはずですとして、政府事故調の報告書でも「電源喪失が地震段階なのか、津波段階なのかという点も不明のまま。」、(上野)「事故が引き起こされた原因についての解明も、できていませんね。」、(加藤)「国会事故調では、津波の前の地震段階ですでに電源喪失していたとの判断をしています。」(149ページ)と論じていただいたのは、その部分を担当した国会事故調協力調査員としてはうれしく思います。
 今後の日本のあり方について、縮小経済に見合った社会、肩の力を抜いて排除することのない上手な分かち合いをする「老いらく社会」(138~140ページ。第7章:経済学者の浜矩子さん)、「人口と地面の大きさに見合うくらいの小さな国になる」「こぢんまりとした、しかしよその国が『あの国はいいな』というような国。競争に負けても、最後には『やっぱりあなたたちが正しい』と言われる国になれればいい」(235ページ。第11章:ノンフィクション作家の澤地久枝さん)というのが、心に染みました。


上野千鶴子 中公文庫 2016年12月25日発行(単行本は2013年10月)
 

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