伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

回転寿司からサカナが消える日

2023-10-15 21:43:23 | 実用書・ビジネス書
 回転寿司チェーンが格安で寿司を提供できてきた仕組みと事情について説明し、それが近年大きく変化し危機が近づいていることを論じた本。
 生鮮魚介の買付の段階で、これまでは日本は主要な需要先であった(特に生魚を食べるのは日本人くらいだった)が、近年は中国を始め生魚の需要が増え、漁業者からすれば注文がうるさく小口で買い付ける日本の業者よりも緩い条件で大量に買ってくれる他国の方が上客となっている、加工業者は寿司ネタなどの生魚加工では冷温下で衛生のために重装備で手洗い等も厳守の厳しい労働条件で働く者の確保に苦しみ、現状では厳しい日本の要求に対応できていることが業者の高評価にもつながるので対応しているが、より条件の緩い他国に売りたいと思うのが当然であり、かつて人件費の安さを理由に海外に加工工場を造ったもののアジア各国の人件費が上がり(今では日本の方が低賃金ということさえある)、海外での加工のために輸送・冷蔵保管の工程が増えるが、原油高と円安、電気代高騰でこれらのコストも増加しているという状況が具体例を示して説明されています。
 当時から産業空洞化と懸念されていた様々な施設・工程の海外移転のツケが返ってくるということですね。消費者として安い商品の提供はありがたいことです(消費者が安い商品でなければ買えない原因は、賃金が上がらないことにあって、結局は、財界・企業経営者の強欲に問題があるのだと、私は思いますが)が、それが目先の利益に踊らされた無理な構造に依拠するものでないかということは考えておきたいですね。


小平桃郎 扶桑社新書 2023年7月1日発行
「週刊SPA!」連載

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