伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

哀れなるものたち

2024-01-29 00:01:46 | 小説
 外科医の父の薫陶を受けたゴドウィン・バクスターが1881年に入水自殺した妊婦の遺体にその胎児の脳を移植して蘇生させてテラスハウス内に住まわせていたベラ・バクスターをゴドウィンのうちで見初めて婚約したゴドウィンの大学の同級生だった王立診療所顧問医師アーチボールド・マッキャンドレスが、性に目覚めたベラがアーチボールドが体に触ってくれない、抱きしめても振りほどかれたという不満を持ったこともあってベラに放蕩者の弁護士ダンカンと駆け落ちされてしまいゴドウィンと2人でやきもきしながらベラの帰りを待ち…という本を1909年に出版し、それにベラが事実と違うと述べる1914年8月1日付の手紙がつけられたものが、1970年代に郷土史博物館の職員に発見され、1990年になって作者の元に送られてきたという体裁の小説。
 大人の体を持ちつつ幼児の心を持つベラの言動を通じて、メインテーマとして、子どもでも、不道徳と評価されても、自分のこと、自分の体のことは自分が決めたいという自己決定権のアピール、サブテーマとして貧困・差別・虐待問題への素朴な正義感が語られる作品です。
 ただ、そういう意図を持つ作品でありながら、「頭蓋が小さいために中国人は英語をなかなか学べない」(189ページ)など、国籍・民族での偏見が散見されます。
 バクスターのうちで飼われている切断縫合された2羽のウサギの名前がモプシーとフロプシー(いわずと知れた「ピーターラビット」のピーターの妹3羽のうち2羽の名前)なんです(29ページ等)が、この2羽オスとメス(29ページ。372ページでは「交接している」のですし)なので、それならピーターとカトンテールにすべきじゃないかと… (@_@)


原題:POOR THINGS
アラスター・グレイ 訳:高橋和久
早川書房 2008年1月25日発行(原作は1992年)
ウィットブレッド賞、ガーディアン小説賞受賞作
 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 独禁法講義〔第10版〕 | トップ | つよがりの君に、僕は何度だ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

小説」カテゴリの最新記事