伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

バロック美術 西洋文化の爛熟

2024-07-26 20:25:35 | 人文・社会科学系
 バロック美術についての解説書。
 バロック美術という言葉はよく耳にするのですが、どういうものを指しているのかよくわからずにいました。この本では、ポルトガル語で「歪んだ真珠」を意味するバローコに由来する、端正で調和の取れた古典主義に対して動的で劇的な様式を意味する、しかしバロックとは西洋の17世紀美術全般を指す時代概念でもあるとされ(はじめに)ルネサンスと啓蒙主義の間に位置する近代と前近代、科学と宗教が同居する矛盾した時代であったとされ、今ひとつ明確な定義というか概念がつかめない印象です。美術史的には、カラヴァッジョ、ルーベンス、ベルルーニ、ベラスケス、プッサン、レンブラント、フェルメールの時代ということで、そういうものとして理解しておけばいいということでしょうか。
 解説は時代や場所を追ってではなく、「聖」(キリスト教美術)、「光と陰」、「死」、「幻視と法悦」、「権力」、「永遠と瞬間」、「増殖」という7つのテーマを切り口としてなされています。私としては絵画論的な「光と陰」、「永遠と瞬間」のような解説が馴染み、作品自体よりも時代背景や聖堂・礼拝堂の由縁等に比重を置いた解説は今ひとつ読みにくくページが進みませんでした。通常目にしない壁画や天井画の画像をたくさん見れたことは収穫でしたが。
 光と陰を強調したカラヴァッジョの様式が多くの画家を惹きつけた背景に「強烈な明暗効果によってデッサン力が未熟であってもそれを糊塗して容易に情景を劇的に仕立てることができた」(64ページ)とされているのは目からウロコでした。


宮下規九朗 中公新書 2023年10月25日発行
コメント
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