伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

V.T.R.

2010-03-18 00:30:24 | 小説
 人を殺すことが許されたマーダーライセンスを持つ者が1000人いる世界で、今はヒモとして生きるマーダーティーが、3年前に別れた恋人のマーダーアールから突然の連絡を受け、アールが3年間で売春組織を経営し自らも売春をしつつ、マーダー界の伝説のトップマーダー「トランス=ハイ」のファミリーのマーダーを殺し続けていることを知り、アールの行方を追い久しぶりに仕事をする気になったティーの行方は・・・というヴァイオレンス系に見せた恋愛小説。
 率直に言うと最後まで焦らせた挙げ句に、どんでん返しだけは見せるものの作ってきた設定を収束させずに放り投げた感じで、読後感は全然スッキリしません。序盤からアールがなぜ自らの身を貶めてまでトランス=ハイの手下を狙い続けるのかが読者の最大の関心事になりますが、何しろこれが結局謎のまま。アールの思いの中身もはっきりしませんし、またトランス=ハイの手下をそこまで憎むのならなぜ・・・という疑問がどうしても残ります。ティーとアールの友人の銃職人Jの思いもとても納得できません。
 である調とですます調の混合された素人少女っぽい文体にもおじさんとしては違和感を感じます。
 ストーリーは読者の通常の予想と期待を裏切るものですし、退廃的で耽美的な雰囲気に快感を感じられないと、辛いところです。


辻村深月 講談社ノベルズ 2010年2月4日発行
コメント
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