信じられないほどの真夏の暑さです。 子供の頃、毎朝母は玄関、茶の間、応接間・・・・
すべての窓、扉を開けて風を通しました。
それから家計を助けるための、和裁の準備にはいる訳けだが、いち早くフィールドへ遊びに
行こうと思う私を、呼び止めるのだ。
糸取りや若き日の母夏座敷
当時、和裁の糸は三種類ありました。ダンボールに巻かれた糸、木の糸車に巻かれたもの、
そして長さ40cmくらいに巻かれた糸・・・こいつは木綿糸だったのかしら・・・よくは知りません。
そして、糸巻きにご指名は何故か、いつも私でした。
最初は嫌々付き合うのだけれど、30センチから40センチの巾の両腕に保つ糸を、母が厚紙に
巻いていく。 糸がさ、まるで生き物のように左のかいなから右の腕へするすると巻かれていく。
この時に、手首を内側へ微妙な角度で曲げるんだ。 曲げすぎるとぞくっと全てが抜けてしまう。
曲げが足りないと手首に引っかかって、母の巻くタイミングを阻害するんだね。
巻かれゆくかいなの糸や母の汗
早く終えてさ、友だちの遊ぶ川へ行きたいのだが、ふと見ると、ひたむきに糸を巻き取る
母の額には汗が浮かんでいる。
子供たちのためにのみ、生きて苦労して・・・・今になってしみじみと知るのである。
「わが母は聖母なりし」・・・このことである。
糸取りの腕のだるさやあぶら蝉
母と過ごしたさまざまな場面を思い出す。 それらはすべて・・・夜空にひかり輝くワタクシだけの
綺羅星のごとき宝石である。そして糸を送る僕と、糸を巻き取る母のふたりをつつむ季節は、
何故か? 真夏の風景なのである。
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