湖の子守唄

琵琶湖・湖北での生活、四季おりおりの
風景の移り変わり、旅先でのふれ逢いなど、
つれづれなるままに、語りたい。

さすらいの旅  その4

2011年06月01日 | 詩歌・歳時記

新潟県のスケールの大きさを、この眸とこの足でまざまざと味わった二日間である。
別れた妻の生まれ故郷である、佐渡島を胸に描きながら、親知らずの難所に突入する。


以前、トラックで、このトンネルと随道の果てしなく、うねうねと続く海沿いの道を抜けた時には、
恐怖感に襲われながら、つくづく上の高速道路をチョイスすれば、と後悔したものだ。
だが、普通車では何の事はなかった。幾つもの漁村を通過。
やがて、海岸に翡翠が拾えることで名高い朝日に差し掛かるが、もう心は魚津に翔んでいる。

蜃気楼ロードをまっしぐら、魚津漁港に到着。まずは缶ビール片手に、小さな展望台に登る。
180度故郷の海を見渡す。感無量、時を忘れる。
岸壁の向こうの海は、毎日パソコンの「蜃気楼カメラ」で観ている海だ。

    石ひとつ
    魚津の海に貰いけり
    碧りも深き平らなる石

振り向けば、雪をたたえた立山連峰が連なり、あぁ、故郷のありがたさ、である。
翌日、お隣の滑川の「タラソピア」へ、いつものように行く。
富山湾の水深200メートルから汲み上げた海洋深層水のプールである。
ジェット水流に身体を預け、海のふるさとを満喫する。

夕景、氷見に到着。お気に入りの宿「ひみの華」。
刺身や氷見牛でビールを呑み終わる頃、ひとり用の釜飯が炊き上がる。

おこげの懐かしさ、美味しさ。部屋のカーテンを開ける。
富山湾に漁り火が三つ、四つ…とたんに、31文字が胸中を電光石火駆け抜けた。
出来た!!最終日にようやく旅の収穫を得られたのだ。

    哀しみを
    重ねて生きるひとの世の
    ひと夜を灯す沖の漁り火

朝、心地よい目覚め!!もう一度温泉を楽しみ、宿を後にする。
春日山城址では、既に俳句はものにしてある。旅は完成したのである。

真っ直ぐ南下、帰途についた。


      毘沙門の祈りに芽吹く古城かな