太もも痛治療の ブロック注射
ペインクリニックに 出かけて
「先生 もう痛まなくなったんですが・・・
注射は 今日で 終わりですかねぇ?」
注射器を手にした医者に 聞いてみたんです
すると 答えは
『そうですねぇ 思ったより 治りが早くて
良かったです 念の為 来週もう一回しましょう』
『チク!』
『やれこらさん いつも通り
一時間は ベッドで休んでくださいよ』
ということで
狭いベッドで 横になって休んでいた時です
隣のベッドから 聞こえてきたんです
『はい 横になって下さい 先生が 注射に来られますからね』
隣は カーテンで仕切られ 「姿」は見えませんが
距離にすれば 1mも離れていません
声と「気配」は 十分伝わるんです
― はいはい 分かりました 先生が注射してくれてんですなぁ -
声の様子では
注射をしてもらう患者は お婆さんの様です。
そして
そのお婆さんが
『ガサゴソ ガサゴソ』 注射の準備をする看護師に
― わたしゃぁ ○○島の出でなぁ(出身)
終戦の時は3年生じゃったん
学校がすんでも(卒業しても) 島にゃぁなんも無いじゃろう
そいで 食えんけぇ むすめの時から
朝早うから 船で街に来て 土方仕事ばぁしょうたん
嫁に行ってもじゃけぇ 40年いじょうしたでぇ
あちぃ時も さみぃ時も 休まゃりゃーせんのんでー
今頃になって 腰が痛うなったんは
若きゃあ時からの無理が 祟ったんでなぁ
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聞くも涙・語るも涙 の 苦労話をはじめたんです
『おばあちゃん始めますよ 最初はちょっと痛みますよ』
姿は見えねど
隣にやって来た医者に
“先生 お婆さんの腰は 必ず治してあげて下さいよ”
思わず・・・言いそうになったんです