瀬渡の蔵

管理人・「瀬渡」のゾイドとたまに日常を綴った記録の保管庫

第一章第四節その三 懐裡

2014年05月05日 20時04分38秒 | 連載
部屋に戻ってから、エリカは考えていた。
「あのような方が犯罪者なんて・・・」
後で聞いたシュウの行ったこと。
それはエリカにとっても驚きを隠せなかった。
あの子の存在については・・・

ふと扉をノックされる。
「はい!」
「失礼します。」
部屋にタキシードの男が入ってくる。
「ミシマ。どうしましたか?」
ミシマ・トモツグ。
エリカの執事であり、一番の理解者である。
「やはりお休みになっておりませんでしたか。もう11時を過ぎています。
今日はいろいろとありましたから、早く休まれた方が・・・」
「ありがとう。でも、どうしても信じられなくて」
「シュウ・キリシマの事ですか」
「あの方が『あのような事』を知っているとはとても思えないのです・・・」
「しかし、これは紛れもない事実ですので・・・」
エリカが悲しい顔をしていた。
「ミシマ。明日、あの方に会わせるように頼めませんか?」
「会うって。あの男と会って何を・・・」
「本当に知っているのかどうかを。それと少し引っかかる事が・・・」
「引っかかる事、ですか?」
「ごめんなさい。勝手なことばかり頼んでしまって・・・」
「かまいません。お嬢様の執事である以上、支えるのは当然のことですから」
ミシマは笑顔でエリカに話した。
「それでは、面会できるように直接司令部に行ってまいります。
通信では内通者と思われてしまいますので。」
「ありがとう。よろしくお願いします。」
そういって、ミシマは部屋を出て行った。

「シュウさん。お会いしたことがないはずなのに、なぜ懐かしい気持ちになったのでしょうか?」
エリカが引っかかっていた事。
自分が覚えている限りでは学校などで会った記憶もなく、今日初めて会ったはずであった。
しかし、初めてのはずなのに心のどこかで懐かしさがこみ上げてきた。
思わずネックレスに触れていた。
中心に大きなエメラルドが付いたネックレス。
遠い昔に誰かから譲り受けたものである。
幼い頃で顔や名前も忘れてしまったが、大切な品物である。
ふと時計を見ると、間もなく0時になるところであった。
そろそろ寝ようとした時に大きな音でノックの音がした。
「はい、どうしましたか?」
エリカが声をかけると扉が急いで開かれた。
「エリカ様、大変です。
ミシマが!!」
「ミシマがどうかしましたか?」
「ミシマが何者かに襲撃されたようです!!」
「襲撃!?」
あまりの内容にエリカが思わずベッドから立ち上がった。
「それでミシマは・・・」
「ドライバーの死亡が確認されましたが、ミシマの姿は無かったとのことです」
「そんな・・・」
自分のせいだ。
あんなことを頼まなければよかったのにと後悔だけが残る。
「今、軍の方で捜索を依頼しています。
大丈夫です。きっと見つかると信じています」
「そうですよね。」
自分の心が空になりそうな中、そう信じ込むことしかできなかった。
再び1人になるとネックレスを手で包みながら、祈った。
「もう誰も不幸にならないようにしてください・・・」
エリカが瞳を閉じても、知らずの内に涙がこぼれていた。

その後はゆっくりと休むことが出来ず、ずっと起きていた。
きっとミシマが見つかると信じて。
しかし、神は残酷であった。
シティの方から大音量のサイレンが聞こえた。
「これは一体・・・」
そう思うと急に扉が開かれた。
「エリカ様!!」
「どうしましたか?外が騒がしいようですが・・・」
「多くの武装したゾイドが、シティに向かっていると基地から連絡がありました!
恐らく何者かによるテロ行為と思われます!!」
「そんな・・・」
これ以上不幸が起きなければと思った途端にこのようなことが起きるなんて。
だが、不吉な情報はこれだけではなかった。
「また、基地の方にも武装したゾイドが向かっているという情報が来ました」
基地にまで・・・
基地にはあの子がいる・・・
「急いで避難をしてください!
2名の護衛を付けますので」
「それでは、地下路から急いで基地に!
あの子を置いては行けません」
「あれは・・・」
「あの子を動かせるのは私しか出来ません。
あの子は会社以上に大切なのですから」
「・・・分かりました。
お気をつけください」
「ありがとうございます。
それでは参りましょう」
エリカと2名の護衛が走りだした。

-続く-



{あとがき}
ふい~、三編同時創作完了。
最後はエリカの話です。
ちなみにタイトルの『懐裡』とは「かいり」と読み「胸のうち・心のうち」などという意味です。
今後のキーワードをちりばめた話になっています。
と言うか、結構むき出しになっているので勘のいい方は今後の流れが分かると思います。
この同時進行はかなり疲れますね。
次回もこの流れに・・・(ガタガタ)
・・・まあ、首を長くして待っていてください。
というわけで、本日はここまで。
次回は戦闘シーン盛りだくさんです。
・・・まだちゃんとは完成していませんが。
それでは、今回も(本当に)ここまで付き合っていただきありがとうございました。

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