Dr.keiの研究室2-Contemplation of the B.L.U.E-

【トランスセクシャル】[訳] Transsexualität

トランスセクシャル(Transsexualtät)って言葉、知っていますか?僕にはあまり馴染みがない言葉なんだけど、世界各国で話題となっている現代社会の問題群のひとつかな、とも思う。かつてとある学会で一緒になった若手研究者のXさんも、この問題に関心を寄せていて、色々とお話を聞かせてもらった。また、僕のドイツ語の教え子の一人も、トランスセクシャルや異性装に関心を持っている。僕自身も、人間理解の幅を膨らますためにも、勉強しておきたいと思った。というわけで、ドイツの【トランスセクシャル研究】の最前線について訳出してみました。よければ是非お読み下さいませ。 

トランスセクシャルは、自分の内面との調和を図るために、様々なレベルで、その当事者の肉体を性に合わせて変更するよう、当事者にせまる実情を示している。その際、-とりわけ「異性装(Transvestitismus)」とは反対に-根本的には、性の形式(Form)を享受することは問題にはならない。そうではなく、むしろ、「現存する性器(Sexualorgan)が、思っている性別と合っていない」、と感じることが問題なのである。トランスセクシャルの人々は、遺伝的、精神的に-そして原理的には心理学的に-際立った問題があるわけではない。ただ、彼らの性的アイデンティティーが自分に合ったレッテル(Hülle)を求めているだけなのだ。ゆえに、彼らは、根本的に、従来の男性/女性のワクを飛び越えている

(*異性装の人々は従来の枠の内での変更を問題にするのに対して、トランスセクシャルの人々は従来の男性/女性のワクそのものに苦しんでいる、ということかな(kei) )

このことは、彼らのもともとの性別の外装を、-とりわけその初期段階において-彼らの望む性別に合わせることで、歴然としてくる。その際、法案によって制限されている個々人の決断によって、問題の度合いは異なってくる。具体的に言おう。つまり、当事者たちは、「小さな決断」と「大きな決断」とのいずれかを選ぶことができるのである。前者の「小さな決断」は、25歳から、体の手術を施すことなく、身分証明書の名前を変更する、という決断である。(ただし、性の属性の変更はできない)。後者の「大きな決断」とは、各人の生理的な性の属性に対して、登記されたすべての証明書を変更することである。この場合、性の適合手術(不妊治療を含む)を行ったということを証明しなければならない。

この二つの解決のためには、≪トランスセクシャル≫の成立に関する二つの肯定的な専門家の鑑定が必要である。「大きな解決」の場合、1~2年にわたる≪日常テスト≫(獲得しようとしている性の役割を生きる生活、異性ホルモン投与の開始)と、それに続く手術という二つの鑑定である。それに加え、手術の際、体の一部である性器は、おおむね身体部分を形作るために使用される(手術の技術については、アイヒャー(1992)を参照せよ。また、現存する思考モデルの批判については、カマーマン(1995)を参照せよ)。

トランスセクシャル研究で重要なのは、「社会的現象(gesellschaftliches Phänomen)が問題となっている」という事実と、「手術は、精神的苦痛を取り除く-社会的に合法化された-解決策の一つではあるが、外科的手術を行わない道もあるのだ」、という事実である。トランスセクシャルと制度化された解決策は、目に見える問題のサイン(Zeichen)-われわれの文化においては、違いを見ることは真理を見ることと同じである-とわれわれの社会の背後に潜む現実のサインである、と解釈することもできる。男性像や女性像をもつこと、性の二分法(Geschlechterdichotomien)を打ち立てて、それを保持すること、そして、とりわけ、他のものと正しく区別することで、定められた基準を維持すること、これらのことが、社会的な根本傾向の一つなのである。それゆえ、トランスセクシャルの人もそうでない人も、別の側であっても、異なった結果を伴っても、同じ当事者たちなのである。

 (引用元:Psychologische Grundbegriffe Ein Handbuch, 1997)

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