どうしても見たい映画がありまして…。
ただ、ハリウッドとかじゃない海外のローカルな映画なので、千葉では見られないかな?、と思っていたら、なんとなんと、我が「千葉劇場」で上映してくれているではありませんか!!
さすがは、我が千葉を誇る名劇場です\(^o^)/
どうしても見たい映画とは、、、
『モロッコ、彼女たちの朝』
という映画です。
第72回カンヌ国際映画祭「ある視点部門」正式出品他、世界中で話題になった「モロッコの映画作品」
なんとも、日本国内でモロッコの長編映画が上映されるのは「初」なんだとか!?
この映画は、
①赤ちゃんポストに関心のある人
②望まない妊娠問題に関心のある人
③緊急下の女性・妊婦に関心のある人
④妊娠葛藤・妊娠葛藤相談に関心のある人
⑤イスラーム社会の女性問題や妊娠問題に関心のある人
⑥里親や養子縁組に関心のある人
⑦保育や子育て支援に関心のある人
には、是非とも見て頂きたい貴重な貴重な作品になっています。
モロッコの異国情緒と甘い香りが包み込む、始まりの物語
地中海に面する北アフリカの「魅惑の国」モロッコから、小さな宝石のような映画が届いた。カサブランカのメディナ(旧市街)で、女手ひとつでパン屋を営むアブラと、その扉をノックした未婚の妊婦サミア。孤独を抱えていたふたりだったが、丁寧に捏ね紡ぐパン作りが心を繋ぎ、やがて互いの人生に光をもたらしてゆく。
モロッコの伝統的なパンや焼き菓子、幾何学模様が美しいインテリアやアラビア音楽が誘う異国情緒とともに、フェルメールやカラヴァッジョといった西洋画家に影響を受けたという質感豊かな色彩と光で、親密なドラマを描き出す。自分らしく生きると決めた彼女たちが迎える朝の景色とは──。
公式サイトではこのような映画だと解説されています。
YouTubeに宣伝動画がありますので、まずはこちらを!
この動画で分かるように、未婚の妊婦にとてもとても厳しいイスラームの社会で、誰にも自身の妊娠のことを話せない一人の妊婦(緊急下の女性)のサミアが、たまたま夫を亡くしたアブラ(シングルマザー)と出会い、そのアブラのやっているパン屋さん(モロッコ風サンドウィッチ屋さん?)で働きながら、「出産の瞬間」を待ちます。
アブラの子であるワルダちゃんがこの映画のキー・パーソンにもなっています。ワルダちゃんがいなければ、アブラとサミアは出逢わなかったんじゃないかな? この辺の描き方もすごくよく考えられています。
実話から生まれた"始まり"の物語
詳しくは書きませんが、まさに「始まり」の物語なんです。映画を見た人なら、分かってもらえると思います。この映画は、「始まり」の物語であり、「始まり」で終わるんです。
この映画の最大の見どころは、サミアの陣痛が始まり、赤ちゃんが生まれ、そしてその赤ちゃんとこれからどう生きるのか、というところです。
この陣痛が始まるところから、この物語の最後の最後までがこの映画の見どころですね。
親にも告げることのできなかったサミアの出産。その出産を陰で支えたアブラとワルダ。行政的な支援が全くない中で、モロッコのたくましい勇敢な女性たち(サミア、アブラ、ワルダちゃん)がどうこの状況を乗り越えていくのか。
一番僕がこの映画で学んだのは、「緊急下の女性」もまた一人の意志をもった人間であり、誰かの支援やサポートがあれば、その危機を自分で乗り越えられる、ということでした。
母子支援や子育て支援について研究していると、どうしても「どうやって支援するか」という話になりがちです。が、この映画で描かれているサミアは、最初こそとても不安げな顔をしていましたが、アブラとワルダちゃんと共に暮らしていく中で、本来の明るさや陽気さやたくましさを取り戻していきます。
そのサミアの心境の変化や、どんどん強くなっていく姿には、本当に心動かされました。「緊急下の女性」もまた一人の人間であり、ちょっとしたサポートがあれば、それだけでどんどん成長していけるし、どんどん勇敢になっていける。そして、これからどうしていけばいいかを自分で決めることができる。
そんなことを教えてくれる映画だったかなと思います。
でも、この映画は、是非とも映画館でしっかりと最初から最後まで見て頂きたいですね。出産した後のサミアとその赤ちゃんがどうなるのか。どう描かれているのか。それは、映画を見て、是非実際にあなたの目で心で知ってほしいなと思います。
カサブランカの美しい街並みも素敵ですし、また使用されている音楽がとてもとても素敵で、そこももうたまらなく素晴らしかったです。
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【以下は、ネタバレの恐れもあるので、これからこの映画を見る人は読まない方がよいかもしれません】
この映画のコメントや感想を読んで、お伝えしたいこと。
①この映画もまた「捨て子問題」「児童遺棄問題」「嬰児殺し問題」に通じる作品ですが、この映画の設定を考えると、今の日本の捨て子問題というよりは、70年代のコインロッカーベイビー事件に通じる内容かなと思います。サミアもこの映画の中で繰り返し、「子どもを養子に出して、私は故郷に帰る」と言っていました。出稼ぎ?でカサブランカのメディナ(旧市街)に来て、そこで何らかの男性と出会い…、そして…、という設定かと思われます。(ただし、この映画ではサミアの相手の男性については全く出てきません)
②映画『ひとくず』とセットで見ると、より今の「社会福祉」「こども家庭福祉」の矛盾や限界を見て取ることができると思います。命の危険に晒されていた鞠を救ったのは、たまたま空き巣で入り込んできた金田という男でした。その金田は、制度の外部で鞠を救い、更にその鞠の母親の凛をも変えていきます。今回のこの映画でも、全く制度的な支援のない、つまり孤立無援の妊婦であるサミアを、たまたま知り合ったアブラとワルダちゃんが手を差し伸べ、そして、共にお互いの人生を乗り越えていこうとしていました。制度を充実させれば、それで人は救われるというのは、幻想であり、妄想であり、逆に人間の生きる力を奪うものにもなりかねない、ということでもあります。
③映画の感想をtwitterで見ていくと、映画の「終わり方」について「??」となっている人が多いなと思いました。でも、あの終わり方がBESTなんだと僕は思いました。監督のマリヤム・トゥザニさんはロンドンの大学に留学した経験をもっています。きっとヨーロッパの緊急下の女性の支援(赤ちゃんポスト、匿名出産、内密出産、養子縁組等)についても知っていると思います。でも、モロッコには、おそらくそういう支援方法はまだ広まっていないと思います(断言はできませんが…)。つまり、何の支援も何の方法もないんです。この映画は、それを皆(モロッコの人々)に問いかけているんだと思います。「こういう妊婦さんがいるんだけど、どうしたらいいと思う?」って。もしドイツやスイス、あるいは日本の熊本であれば、サミアは、産まれたばかりのアダムを赤ちゃんポストに託すこともできますし、また、児童相談所に行くこともできるかもしれません。でも、未婚女性にとても厳しいイスラームでは、そうした手厚いサービスがあるとは思えません。
④「サミアが一人葛藤する描写は少々長く感じた」というツイートがありました。おそらく「妊娠葛藤」という言葉を知らないと、そう感じるんだろうなと思います。この映画の素晴らしいところは、サミアの心の中の「葛藤」をものすごくしっかりとしかもゆっくりと描写しているんです。「この子をどうしよう」という心の葛藤を本当にしっかりと描き切っている映画でした。同時に、このサミアのような葛藤は、日本にいる緊急下の女性たちの中でも生じている葛藤です。この赤ちゃんを自分で育てるか、それとも、誰かの手に委ねるか。この赤ちゃんの責任を自ら負うか、それともその責任を放棄するか。それだけじゃないんです。この映画では、(最大の見どころとなる場面で)ある強烈なサミアの葛藤が描かれています。それだけ、妊娠葛藤(あるいは出産後の母親の葛藤)というのは、強烈なんだなと思わされます。
ちなみに、この映画を見て、「望まない妊娠の末に孤立出産する妊婦」についてもっと知りたい人は、是非この本を読んでいただきたいですね。
日本の中にいる「サミア」のような女性たちが漫画になって紹介されています。そして、「小さないのちのドア」を開設した永原さんの解説やコメントもいっぱい入っています。(僕もほんの少しだけ出てきます…苦笑)
この本も是非読んでほしいですね!!
…
まだまだ語りたいことはいっぱいありますが、、、
まだまだ絶賛放映中なので、是非是非見て頂きたいと思います。
千葉の人は迷うことなく「千葉劇場」へGo!ですよ!!!
…
ちなみに、、、
9月17日からは、、、
という映画が上映されます。これも是非とも見たいなって思いました。
ボスニアで起こった「スレブレニツァ・ジェノサイド」を扱った映画です。
この映画もチェックですね!!