散歩絵 : spazierbilder

記憶箱の中身

そろそろ種まきの季節がやって来た

2021-03-10 03:59:56 | 散歩絵

その昔、大変日当たりの良い部屋に住んでいた。勾配天井で長いベランダ側に大きなガラスの引き戸があった。南向だったので暑い夏はかなり辛い部屋だった。もっともそこに住んでいた頃は猛暑なんて稀で、鉛色の雲が何層も重なって頭上に覆いかぶさってくる様な空がドイツの空なんだと了解していた。そこには8年間住んでいたけれど、暑くてヘトヘトになった夏が一度だけあった。スイカを食べるだけが暑さ凌ぎで、スイカは一瞬体を冷やしてくれる。映画館に行けばクーラーがあるだろうと勝手に思い込み街に出かけ、涼しさを期待して映画館に飛び込んだ。
しかし、進めど進めど暑さは外と変わらず、むしろ息苦く、大きなコーラを抱えて汗を滲ませながら映画を観ることになった。
昔の話だ。(今ではドイツの映画館もクーラーが入っている)
日当たりの良いその部屋で毎年二月下旬になると種を蒔いた。
トマトの鉢を十鉢程作って、それぞれが二メートル程に育ち程よい緑のカーテンになった。溜息で吹き飛ぶ様に細かなペチュニアの種なども播いて育てたし、苗を作るのは楽しかった。
土の湿り気に触れて発動する種、吹けば飛ぶ小さな粒の中で細胞増殖が始まる。そんな事を想像しながら苗の世話をするのは楽しかった。
今年は種蒔きよりも土作りに励みたい。
実験中。