ガーベラ・ダイアリー

日々の発見&読書記録を気ままにつづっていきます!
本の内容は基本的にネタバレです。気をつけてお読みください。

河合隼雄 他 「学ぶ力」 岩波書店 

2006-09-27 | こんな本読みました

この本は、小樽の絵本・児童文学研究センター主催によるセミナーの記録を基にしてできたものである。以下が、その内容。

講演  生きること・学ぶこと    河合隼雄
     森流「学び」術のすすめ  森 毅

討議  学ぶ力  河合隼雄 工藤直子 佐伯 胖  森 毅 工藤左千夫

論考・エッセイ 
     児童文化と学び    工藤左千夫
     「中途半端」を遊ぶ  工藤直子
     「学ぶ」とはどういうことだろうか  佐伯 胖

あとがき  河合隼雄   

簡単に略歴を記す(本書より)。
河合隼雄・・・臨床心理学者。現在文化庁長官(*先日脳梗塞で倒れられました。その後の情報が待たれるところです…) *部はガーベラによる。
工藤直子・・・詩人
佐伯 胖・・・認知心理学者
森 毅 ・・・数学者
工藤左千夫・・・絵本・児童文学研究センター理事長

「学ぶ」ということを軸に、各現場で活動・活躍されている方々の話が大変興味深かった。以下、印象に残ったところを引用してみる。

<『論語』の中にある僕の非常に好きな言葉です。「之れを知る者は、之れを好む者に如かず。之れを好む者は、之れを楽しむ者に如かず。」学んでいる者よりも、好きだと思っている者がいい。好きだと思っている者より楽しむ者が一番上>(河合氏講演より)

<自分が学んできたことを、いっぺんガッとつぶされる、あるいはガタガタと揺すられるのは、すごく大事なことではないでしょうか。そういうことによって新たな学びが出てくるわけです>(同上)

<わからんなりに何とかするでと言いながら、付き合っていくうちにだんだんわかってくるという経験はものすごくしました。これは学力なしで何とかする学力です。矛盾していますけどね。>(森氏の講演より)

<だいたい絵本や子どもの本でも、わからせるためにやさしくすることが大事なのではなく、わからんでもええから楽しめるようにするにはどうしたらええかを考えた方がいいと思います。>(同上)

<教授が賢くならなくて、赤の他人の学生さんを賢くしようというのは絶望的ですよ。お子さんを持っておられる方でいうと、お母さんがちっとも賢くならなくて、子どもを賢くしようというのは、原理的に無理ですよ。何せ自分が賢くなることが大事です。>(同上)

<過去に頼っていると自分が自由になれません。だからどんどん自由になったほうがいい…。…それでもさっきの教養みたいなものが残るんですよ。……そのときに割りに辛いのは、人間は自分の考え、自分から自由になるのが一番難しい。俺はこういう考えといって固まって、安心したがるんですよ。……自由というのは結局自分を膨らませることです。>(討議。森氏の発言より)

<「やったことはやりたかったこと やらないことはやりたくなかったこと」>
<「三日坊主も10回やれば30日>
(以上工藤直子氏の発言より。氏のおまじないだとか。)
河合氏は<「三日坊主は何もしない人よりも3日も偉い」>と言ってこられたらしい。

<児童観の変遷は、人間観のそれと不可分な関係にある。子どもについて知る(学ぶ)ということは、自分史を通して自分を知ることに他ならない。「自分探し」の課題は、子どもを手がかりとして始まるものと言える。>(工藤左千夫氏のエッセイより)

<「フルートを学ぶ」といえば、最初は、「いろいろな曲がフルートで演奏できるようになることだ」と思ってしまったけれども、よく考えると、とてもそんな単純なことではないとのことのようです。私たちは、フルートを通して「さまざまなこと」を学んでいるのです。その「さまざまなこと」の中には、フルートという楽器の特徴、フルートを演奏するときに「からだ全体を楽器にする」ということ、そもそも、自分で音楽を「表現する」ということの意味、モーツアルトという作曲家のすごいところ、バッハのすごいところ、……などなど、とうてい語り尽くせない無数のことを「学んで」いるわけです。>(佐伯氏の論考より)

今や寿命がのび、「生涯学習」に関心を持つ人が多いという。「学ぶ」ということを堅苦しくとらえずに、自分の興味のあることを(役に立つとか立たないとか関係なしに)とことん追求していくことがいいのではないかと思った。それが、たとえ中途半端なものに終わったとしてもー。

 


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