副題として<「イエ」を出て「家」に帰る>とある。
これは、河合隼雄氏が、臨床の現場で活躍している臨床心理士の方々の抱く疑問について答える形で、氏の考えが述べられている本である。
さて、ここで質問。
「あなたは、今、日本の家族に問題があると思いますか?」
……そう尋ねられて「いいえ」と答える人は、ほとんどいないと思う。昨今、家庭内暴力・殺人、児童虐待、キレる小学生などのニュースはあとを絶たない。
では「なぜ家族の問題が日本に多いのだろうか?」
河合氏は、2つの大きな要因があるという。
1つは、欧米の影響を受けて、日本人の価値観・家族観が急激に変化している。
もう1つは、経済的に急激に成長し、物質的に豊かになり、生活様式が変化したこと。
しかし、これらの<変化>に対して、<それに見合う生き方が考えられていない>というのである。
……それでは<変化>に見合う生き方とは?
第一章 家族とは何なのか
第二章 親子・夫婦の不協和音
第三章 父親のどこが問題?
第四章 母親のなにが問題?
第五章 子どもにとっていい家庭とは?
第六章 問題にどう対処するか
という章立てのもと、問題についての本質にアプローチし、問題解決の指針を提示していくのである。
まず氏は、昔の日本人の生き方・道徳観は「モノが少ない中で生きていくことが前提」になっているとし、「もったいない」「しんぼうする」「モノを分けあう」ということがあった、と説く。それも「自然」なかたちで身についていた。
また、昔の日本は「イエ」(家名)が大切だったが、今は欧米の「個人主義」の表面だけ(…つまりキリスト教の倫理観に裏付けられていない)真似て、「ゆがんだかたちの個人主義」が生まれているという。
……つまり「根本の前提」が変わってしまっているのだ、と。
以下、印象に残った氏の考えを、各章ごとに記してみる。
第一章では、家族を持つことの苦しみと大きな意味。自分の答えをつくりあげる練習の必要性。「家族の対話」を大切にする「家」を作っていかねばならない。
第二章では、親の権威について、親には子どもの苦労を見ていられるだけの強さが必要。男女関係・夫婦関係でも変わっていくべき。子どもが母性にあまり深くとりこまれると、自立しにくくなるという点の指摘。
第三章では、新しい父親像をつくること。知識的には大人だが、情緒的には子どもという人が増えていること。やりすぎることで生じる親子メールの弊害について。
また、父親が子どもに対して自らの権威を示すためには、これは絶対に誰にも負けないとか、おれはこういう人生観でこういうことをやっている、こういうものを持っていることが必要である。
・・・・・・ (つづく)・・・・・・
あります。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/402257920X
元々、週刊朝日に連載されていたものを
単行本化したものですが、
「個人主義」と「コジンシュギ」について
「兄弟げんかの効用について」
等の 記事が入っています。
読んでみると、なかなかいいと思いますよ。
それでは。
面白そうな内容ですね。図書館で見かけたのですが、未読でした(ちょうど今『縦糸横糸』を読んでいました)。今度読んでみたいと思います。