本書は「週間朝日」のコラムに連載されたもので、そのうちの75編が収められている。平易な語り口でとても読みやすく、河合氏の仕事、読まれた本とその感想、交友関係なども知ることができおもしろかった。
その中で、特に印象深かったのは、作家川上弘美氏と行った「読書ツアー」。
これは、どういうものかというと河合氏と川上氏が10冊の本を選定。参加者はそのなかの1冊を選んで持参する。期間中(1泊2日)、自分の名前と読書している本の名を書いた札をつけ、ひたすら読書。話をしたい人は談話する場所でしてもいいし、同じ本を読んでいる人が感想を話し合うのもよい。
そして、これだけでは少し物足りないので、<自分が読んでいる本で、「ここだ」と印象に残ったところを、それぞれが全体の前で読むことにしよう、ということになった。>そこで、<400字詰め原稿用紙1枚に、自分の引用したいところ、それに関する自分の考えを書いて提出してもら>い、会の最後に一同に集まって、引用部分のみを<朗読>するというもの。
1分足らずの引用文の朗読に、その本の面白さのみならず読み手の個性がよく出てくる。それについてコメントしたり、追加発言をしてなかなか盛り上がったそうである。私も、読書ツアーに参加してみたい。。。いや、自分の生涯を閉じるまでに(笑)、本好きの友人・知人と一度はやってみたいなあと思った(ただ今メンバー募集中!笑)。
この記事中の< >部分は、本書より引用しました。
<思春期というのは、「さなぎ」の時期として、何らかの「荒れ」を体験するのは当然のことである。そのときに「さなぎ」を守るものとしての大人が、しっかりと逃げることなく正面から会うことが大切なのだ。それを避けて、子どもに「悪」とか「異常」のレッテル張りをするだけでは、子どもがよりおかしくなるのを助長するだけである。>(「さなぎの内と外」より)
<ー前略ー人間にはガマンをする力が必要なことは明白である。ガマンなどというからいけないので、自分の衝動を抑える、抑制力というほうがいいかもしれない。><昔は、ものがなくカネもなかった。このために、子どもたちは文句なしにガマンを強いられた。そのガマンが大人になって分別する抑制力となっていったのではなかろうか。とすると、われわれはこの、ものが豊かで便利な世の中で、子どもたちにガマンする訓練を怠りすぎ、何でも自分の思いどおりになると思い込んだまま大人になり、抑制力のない成人をつくることになったのではなかろうか。このあたりで、われわれはガマンの再評価を試み、どのようにして子どもたちにガマンを教えるか、考え直してみてはどうだろう。>(「ガマンの評価」より)
<「子どもがドアを閉めて寝室にこもっていれば、親は異常事態だと受け止め、当然すぐにノックして子どもと話し合うために入ろうとする。ところが、日本の親は部屋にこもった子供を放っておくのがプライバシーの尊重だと考えているふうだ」ー中略ーケントさんの指摘は実に的確である。個人を育てるためにつくられたはずの「個室」が、日本では個人主義をなし遂げるために必要な対人関係の訓練から逃避する場になってしまっているのだ。>(「コジンシュギ」より)
*ケントさんというのは、<オーストラリアの社会学者で、日本語を巧みに話す知日家のポーリン・ケント>氏のことをさす。(*ガーベラによる註)
<親や教師などの大人が、子どもが感動するのは好きだが、疑問を持つのを嫌がることが多いのは、もっともだと考えられる。子どもの感動は、大人の「思い通り」なので、安心なのである。ところが疑問となると、どこに話が進んでゆくかわからない。そこでなるべく疑問を封じて感動させようとするので、子どもの創造性の芽がつみ取られるのではなかろうか。感動はもちろん大切なことであるが、疑問に対しても開かれた態度で大人が子どもに接し、子どもから出される疑問を育てるようにすると、創造性が高まると思う。>(「感動と疑問」より)
ここでは引用しないが、「生意気」も面白かった。生意気と思われる学生から、新しい発展につながるようなアイディアが生まれてくるという。生意気の背後で、何か未知の可能性がうごめいているとも。河合氏の、どんな生徒も受け入れてらっしゃるということが伝わってきた。
連載時にず~っと楽しみにして読んでいたのですが、
単行本になったときに、面白かった回が
数本抜けてしまっているので、
上記の内容の回が入っていたかどうかは
定かではありませんが、、、
最近、、大地震は発生しましたか?(笑)
(「キツイ一撃」の お返し、、、)
……うむ。N氏さんの反撃をくらってしまいました(汗)
「最近、大地震が発生しましたか?」って(笑)
いやー。記憶にありませんねー(笑)。
……記憶にないだけなのか、はたまた対話自体すくないのか?笑。(←とりあえず深くツイキューするのはやめておきましょう笑)
こちらの読書ツアー、面白そうですね。
なかなか実生活でここまで本どっぷりで暮らせるなんて、あり得ないじゃないですか! こんな機会でもない限り・・・。
しかも同じ本をまさに読んでいる途中の人が回りにごろごろいたりしたら?!!
ちょうど私が読み終わった恩田さんの「三月は深い紅の淵を」の世界のようです。
「読書ツアー」、有閑マダムさんもご興味をもたれたようですね。ぜひぜひメンバーに!(…って予定もないのに、リスト入り!笑)。課題図書を選定するのがむずかしそうですが。。。
そういう意味では有閑マダムさんがご紹介してくださっている恩田作品もよさそうですね!やっぱりこれは読むべきか!笑。
(いや。実は過去に1冊恩田作品を経験したのですが、あまりにもツルツルと読めてしまって、むう。。。と思っていたのです。笑)。