9月の連休は好天続き。今後しばらくこの時期にこれ程連続する休暇はない、ということで山には大勢の登山者が入っていました。山小屋は超満員で、三俣山荘では2枚の布団に5人が寝るという状態でした。こうなると夜中に一度小用に立って戻ってくると寝るスペースがありません。それと隣人のいびきの凄さに辟易しました。
「混雑が嫌なら連休に登山に行かなきゃ良いじゃない。どうせいつも暇なのだから」と言われそうです。そうです。私一人なら混雑する連休に山に入る必要はありません。ただしまだ一緒に山を登っている連中が毎日会社勤めをしているので、グループ登山となると連休利用が多くなります。
山では私よりシニアの方を多く見かけました。「わざわざ混雑する連休に来なくても・・・」と思うのですが、皆さんそれなりの事情をお持ちなのでしょう。
今年の春先にこの連休はボルネオ島のキナバル山に登る計画を立てていました。その後起きた大地震でキナバル登山は不可能になりましたが。そこで黒部の山旅を行った次第なのです。
キナバル登山で一番難しいのは、山小屋の予約なのです。地震が起きる前で大体1日の入山者は200名程度に絞られていた様ですね。昨年台湾の玉山に登りましたが、こちらも山小屋は1軒しかなく、入山者は1日100名弱に絞られていたと記憶しています。
ネパールにも何回かトレッキングに行きました。ネパールには入山数制限はありませんが、山小屋(ロッジ)は2-3人一部屋で一人一つのbedが確保されています。これら諸外国の山小屋事情と比べると日本の山小屋はかなり「異常」です。異常な理由を幾つか考えてみました。
1)畳とベッドの違い
外国で登山・トレッキングを発展させたのは英国人です。彼等はベッドで寝ます。だから一人一ベッドが大前提。一方日本人は畳+布団が基本ですから寝るスペースはベッドより柔軟に設定できます。でも異常な混雑を見ると柔軟性がbackfireしていると感じます。
2)キッチン能力の違い
ネパールの山小屋では、トレッカーは自分でメニューを選択することができますが、日本では全員同じ単一の食事を食べます。
またネパールでは現地で採れた野菜や卵が中心のメニュー。レトルト食品の利用はまずないでしょう。またネパールの火力は薪が中心。つまり食事の供給能力に圧倒的な違いがあります。また「夕食は第1班が4時15分にスタートして40分おきに5回転」などという神業的な運用は外国では考えられません。ここでも日本人の器用さがマイナスに働いている気がします。
3)以上のような「供給能力」の違いに加えてユーザー側のマインドも違いますね。日本では「連休なのだから混雑しても仕方がない。飯が食えればいい。安眠ができなくても少し休めて山に登れれば良い」という意識が強いと思います。通勤(通痛)ラッシュに慣らされた悲しい性の産物かもしれなせんが・・・・
さて色々愚痴や文句を並べましたが、次に建設的な提言をしましょう。
第1は登山者・山小屋・国や企業が意識を変えることです。レジャーの意識を変えることです。つまりレジャーはリラックス・リフレッシュする場だ、という意識を持つことです。
第2はより具体的な提言。山小屋は「予約制を徹底し、定員を守りましょう」。予約していない登山客は泊めない、ということを徹底することです。つまり街のホテルや旅館と同じ営業をするのです。「緊急時に宿泊に困った登山客を救う義務が山小屋にある」という意見も出そうですが、ちゃんとした登山者はビバーク(緊急露営)の準備はしているものです。ちゃんとした登山者はツエルトや非常食・コンロ位は持っていますから緊急露営は可能です。だからあらかじめ「予約者以外泊めません」ということを徹底すれば良いのです。
第3は「山小屋の週末・休日料金を高めに設定する」ことです。これはホテルや旅館では今では当たり前の話です。こうすると時間に余裕のある人は平日登山を行い、登山客の分散を図ることができます。登山客の分散は自然資源のoveruseを防ぐためにも必要なことです。
第4はJRなどが平日旅行を促進する価格政策を進めることです。私のようなシニア世代になると「大人の休日倶楽部」を利用するとJR東日本の料金は最大3割引きになりますが、例えばこの割引を「平日4割・終末祝祭日2割」などと変えると良いと思います。
第5は登山者が「山は空いている方が良い」という意識を強く持って可能な限り平日登山をすることです。
第6は国がこれ以上祝祭日を増やさないことです。本当は祝祭日を減らすべきなのですが、一旦作ったものを減らすのは難しいでしょう。せめてこれ以上は増やして欲しくないと思います。
第7は企業がもっと有給休暇の取得を促進するべきです。私は自分のサラリーマン経験から「休みを取って遊ばない人には本当の仕事はできない」と考えています。本当の仕事というのはcreativeな仕事という意味です。Creativeな仕事をする人は結果にコミットします(どこかのコマーシャルにありますね)。逆に成果を挙げることのできないサラリーマンは「勤務態度」に拘ります。でもそんな社員を揃えても会社は良くならないということを経営者は早く認識する必要があると思老います。
まあこの提言が受け入れらるには時間がかかるでしょう。
企業経営から退いた今の私にできることは「二度と長い連休の混雑する山には行かない」という位のことなのでしょうが・・・・