金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
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「普通の国」になるための普通でない国会騒動

2015年09月18日 | ニュース

昨日(9月1日)参院の特別委員会で、採決を阻止しようとする野党議員が委員長席の殺到し、議場が騒然となる中で安保法案が可決された。

「普通の国」になるための法案が普通の国らしからぬマナーで採決された訳だ。安保法案は今日にも成立、と報じられているが、国会ではもう少し理詰めの議論ができないものか?と思わざるを得ない。

たとえば野党側の議論の中に安保法案は「徴兵制」につながるという主張があるが、これは理論的におかしい。

というのは集団的自衛権を正式に行使できるようになると、他国の軍隊と共同して自衛権を行使することになる訳だが、他国の軍隊と共同作業を行うには、英語によるコミュニケーション能力や他国の軍隊と同レベルの軍事能力が求められる。武器がハイテク化し、高度な知識と訓練を積んだ職業軍人でないと操作ができないのが現状だ。

米国はベトナム戦争終結後徴兵制を廃止し、現在政府にも国防総省にも徴兵制を復活する動機も必要性もないと思われる。

徴兵制の廃止は世界的な傾向だが、まだ徴兵制を残している国もある。ロシア、韓国、デンマーク、ノルウェー、スイスなどだ。

スイスでは徴兵制廃止が議論になったことがあったが、2013年に国民投票で徴兵制の存続が決まっている。その理由の一つは徴兵制を廃止すると国防能力を維持するためにはNATO北大西洋条約機構に加盟せざるを得なくなり、国の根幹である永世中立を揺るがすというものだった。

つまりスイスは永世中立を守るために、総人口の2%近い常備軍を徴兵制で確保しているのである。

以上のような事実を組み合わせると「個別自衛権と徴兵制」と「集団的自衛権と職業軍人制」という組み合わせは整合的だが、「集団的自衛権と徴兵制」という組み合わせは整合的でないと私は考えている。集団的自衛権を容認することは徴兵制につながるという意見は論理的に破綻しているのである。

国を守ることが自国の憲法の条文だけでできるならこんな簡単なことはない。しかし現実は違う。現実の世界からスタートしない議論を繰り返すことに何ほどの意味があるのか?と感じる次第だ。

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