金融そして時々山

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マイナンバーカードには「裏」がある

2015年09月13日 | ニュース

マイナンバーカードとは、来年1月から希望すれば無料で貰うことができる「税と社会保障」の共通番号が記載された「個人番号カード」のことだ。

「マイナンバーカードに裏がある」というと、多くの読者の方は「政府にはマイナンバー制度を利用して、国民の資産を把握したり、還付をほのめかしながら、軽減税率を採用することなく、消費税の一律引上げを狙うを意図がある」ことを指すのか?と思われるだろう。

確かに政府がそのような意図を持っていることは間違いない。だが、それは正確にいうと「マイナンバー『制度』には裏がある」という話で、ここではまず「『カード』に裏がある」という話をしてみたい。

内閣府等によるとマイナンバー制度の導入目的は「公平・公正な社会の実現」「行政の効率化」「国民の利便性の向上」の3点である。この内一般的には前の二つは主に「ムチ」的で最後の「国民の利便性の向上」が「アメ」の部分と言われている。

その「アメ」の部分を見てみよう。

「アメ」の部分の例として「各種行政手続きのオンライン申請が可能になる」「図書館カードとの一体化など市町村が提供するサービスを受ける毎に必要だったカードを一枚にまとめることができる」「各種の民間オンライン取引の「利用者証明」に使うことができる」といったことが挙げられている。

ここで気がつくことは「アメ」の部分は総て「マイナンバーカード」を取得して初めて得られるメリット、ということだ。つまりマイナンバーカードを取得しない人にとって、マイナンバー制度は「負担(例えば行政窓口でマイナンバーを求められた場合「マイナンバー通知カード」と身分証明書の提示を求められるなど)ばかりが増える制度」と感じられるだろう。

もちろん「公平・公正な社会の実現」「行政の効率化」は、真面目に暮らしている人にとっては、中長期的にはプラスになるはず、の話だが、具体的な成果は見え難いので、多くの人は目先の負担で制度を評価するだろう。

では便利そうに見える「マイナンバーカード」だが、どの位の人が取得を希望しているか?というと内閣府が7月に行った世論調査によると「マイナンバーカードの取得を希望しない」と回答した人の割合は25.8%で「取得を希望する」と回答した人の24.3%をやや上回る。一番多いのは「現時点で未定」という人で47.3%にのぼる。

便利そうに見えるマイナンバーカードだが、マイナンバーカードを活用するためには、カードリーダーをパソコンにつないでICチップに格納されている「個人情報」を読み込ませることが必要だ。なおスマートフォンなどを使った認証も検討されているようだが、詳細は不明。

「カードリーダーを使って個人認証を行う」というと、税金の電子申告「e-tax」を思い出す。同じようなプロセスと考えてよいだろう。

私も税の電子申告を行っているが、一番最初に行ったときは、カードリーダーの不具合でちょっと苦労をしたことがある。

 http://blog.goo.ne.jp/sawanoshijin/e/8d30b93145b3c9ec200252ac073ef4db

その頃に較べるとカードリーダーの性能は向上していると思うが、多くの人がカードリーダーを使って、行政サイトなどへのアクセスを開始すると最初は大きな混乱が起きるのではないか?という懸念はぬぐえない。

さてこれからが本題。実は「マイナンバーカードを使ったこれらのサービス(電子認証等)では、『マイナンバーは使わずに』『電子認証機能を使って本人を認証する』」と言われている。では認証に使う個人情報はどこに入っているか?というとマイナンバーカードの裏にあるICチップの中の「公的個人認証AP」の中に入っている。マイナンバー(個人番号)は「券面事項入力補助AP」に入っているが、電子認証には使われない(APはApplication Programの略)。

ところで今マスコミを賑わせている「消費税引き上げ時にマイナンバーカードを使って還付を行う」財務省案でも、実はマイナンバーそのものを使われない見込みだ。ICチップに入っている個人認証機能を使って、購入情報を政府のサーバーに伝送するという説明が行われている(直観的にはムダが多い気して「本当か?」という疑問は残るが)。

今日(9月13日)の日経新聞朝刊は「マイナンバーと個人番号(マイナンバーカード)の区別がつく国民はいるのか」という批判は多い、と書いている。

随分「国民」を見下した記事だが、「マイナンバーカードは使うがマイナンバーは使わない」という事実(であればの話だが)に混乱する人は多いはずだ。

ところで2週間後に迫った私のマイナンバー講演では、スライドの一つは「マイナンバーカードには『裏』がある」というタイトルにするつもりだ。マイナンバーカードの利便性とリスクを理解するためには『裏』にあるICチップ機能を理解しておく必要があるからだ。

そして「自分はマイナンバーカードを積極的には使わないので、リスクを避けるために当面はカードを取得しない」という判断もありではないか?と私は考えている。

 

 

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