金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

菅さん、S&Pという援軍に疎くては駄目ですよ

2011年01月28日 | 社会・経済

昨日S&Pが日本国債をワンノッチ引き下げAA-とした。これは中国と同じで、債務問題が噂にのぼるスペインAAよりも下。

ニュースによると菅首相は記者団に「今、初めて聞いた。衆院本会議から出てきたばかりで、そういうことに疎いので改めてにして欲しい」とコメントを避けたそうだ。

一国の首相としてはS&Pの格下は不愉快な話ではあるが、見方によっては財政と社会保障の一体改革を掲げ、野党との対話を求める菅政権にとっては強力な援軍だ。つまり国民がS&Pのダウングレードを危険信号と判断すれば、野党側としても財政健全化に向けて超党派的な対話を回避することが難しくなるからだ。

もっともこれにより、自民党・公明党が解散要求を引っ込める可能性は極めて薄いだろう。というのは本当の財政危機が来るのは少なくとも5年位先だという判断があるからだ。

だがそれで本当に良いの?

国債の格下は民間企業の海外での資金調達にじわじわと影響してくる可能性があるかもしれない(S&Pはソブリンシーリングの考え方は取っていないと思うが)。

また国民の国の将来に対する不安は増大する。政治家は国債格下を重要な警鐘と受け止めて欲しいものである。

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世界の景気回復は三車線型(ダボス会議から)

2011年01月27日 | 金融

昨日オープンした世界経済フォーラム(ダボス会議)で、議論の中心となったのは世界経済の回復スピードだ。昨年の経済成長が予想を超える強さだったため、2007年以降一番楽観論が高まっている。

FTによると悲観論で有名なルービニ教授はA glass half-fullという言葉でアップサイドリスクとダウンサイドリスクが拮抗していると述べた。A glass half-fullというのは、コップの中に水が半分入っているということだが「まだ半分入っている」とことから楽観視を意味する。一方コップに水が半分入っていることを半分空になったということに着目するとhalf-emptyとなる。これは悲観の比喩だ。事実は一つなのだが、見方により楽観的にもなるし悲観的にもなるということだ。

IMFの特別顧問朱民氏(元中国人民銀行副総裁)はThree-speed recoveryという言葉で、今年の世界経済の回復見通しを説明した。一番速度の速いレーンは新興国で6%以上の成長見通しで、二番目に早いレーンは米国で3%、一番遅いレーンを走るのはユーロ圏で2%だ。FTを読む限り日本への言及はないが、一番遅い走行車線を走るのではないだろうか?(私見)

朱民氏は「米国の驚く程の消費力の成長が新興国を「古い標準」old normalの輸出依存体質に引き戻し、内需主導型経済を発展させない」危険性があると指摘している。

コロンビア大学のスティングリッツ教授は財政刺激策の終りは良い前兆ではないと懸念を示したが、フォーラムの多くの参加者は三車線型の景気回復論を支持した。

昨日ニューヨーク・ダウはザラ場で2年半ぶりに12,000ポイントを回復(引けでは割った)した。

最速レーンは脱線リスクも高い。一番遅いレーンでは株価上昇期待が低い。今年は真ん中のレーンを走ろうと考える人が増えているのだろうか?

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新卒者の就職難を「格差原因論」的に考察した

2011年01月26日 | 社会・経済

今日(26日)から世界経済フォーラムが主催するダボス会議が始まる。これに関連してエコノミスト誌はThe rich and the restと記事の中で、胡錦濤国家主席、英国のキャメロン首相、アメリカ第二の富豪ウォーレン・バフェット、IMFのストロス・カーンという一見共通性のないリーダーがある懸念を共有していると書き出す。その懸念というのは所得格差が社会と経済の安定性を脅かすというものだ。そして多くの会議参加者がこの懸念を共有していると思われる。世界経済フォーラムの新しい調査によると、フォーラムのメンバーは経済的格差の拡大は世界的な統治の失敗とともに次の10年の主なグローバルリスクであると考えていることが分かった。

だがエコノミスト誌は関心事が格差の結果の是正に傾き過ぎることに警鐘を鳴らし「政策立案者は不平等そのものを攻撃するよりもも、不平等を生み出す社会や市場のゆがみを取り除く努力をするべきだ」と主張する。

不平等を生み出す仕組みとは例えば、中国で戸別制度と呼ばれる地方の住人が都市部に移籍することを禁じる仕組みだ。エコノミスト誌はこのように中国の例を出すものの、改革の緊急性が高いのは先進国の方だと述べる。先進国では能力の低い人の将来性が悪化しているからだ。

エコノミスト誌のこの記事はかなり長いのでポイントの紹介はこの辺でやめる。もし日本語で全文を読まれたい方はこちらへどうぞ。http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5312

さて私はここでエコノミスト誌の指摘と日本の新卒者の就職難の問題を考えてみた。今年の新卒者で就職が決まっている人は69%で、31%の人は就職先が未定だ。これは1990年代半ば以降最悪の就職率だ。

この就職率の悪さは景気低迷の結果だけだろうか?

確かに新卒者の就職率は悪い。だが一方で中小企業は強い求人ニーズがある。つまり大企業では求職数が求人数を上回り、中小企業では求人数が求職数を上回るというミスマッチが発生している。このミスマッチを解消するキーワードは「職の流動性」mobilityなのだが、新卒者と企業側双方に職の流動性に対する不安感や不満が強いので、新卒者は安定性が高いと思われる大企業を指向するというのが日本の新卒者就職事情だ。

一部で是正の動きはあるものの、大学3年から学生は就職活動にプライオリティを置くので、学業はおろそかになる(かって山登りに明け暮れた学生時代を送った私に学生の不勉強を詰る資格はないが)。だが採用する企業の方は必ずしも学生の大学における学業の習得度合いだけを重視している訳ではない。企業は大学のネームを見ることで、学生の高校時代の成績、つまり地頭の良し悪しを判断しているのだ。その裏には「地頭の良い学生を採用すれば社内教育で使えるようにできる」という社内教育思想(ないしは幻想)があると思われる。

このようにして採用され、社内教育された社員は社内固有文化に染まっていくので、mobilityは低下している。

就職難問題を格差論的にみると、新卒時の就職の成否というワンタイムの出来事が長い人生の経済的格差の原因になる可能性があるというのが、今の日本社会のリスクだろう。このことについて日本のリーダーがダボス会議で発言するのかどうかは知らないが。

だがここでもう一歩踏み込んで新卒者の就職難問題を考えてみよう。キーワードになるのは、エコノミスト誌が「現在の技術は能力のあるものには有利に働くが、先進国で能力の低い人の将来性は暗い」と述べている点だ。

現在の日本の卒業生は、日本人だけでなく、アジア諸国の学生を中心とする海外の学生とも競っている。国際的な業務展開を望む企業は、優秀な人材を内外から求めるからだ。英語や中国語という「技術」を持っているものが有利なのは当然だ(彼等は日本語も堪能だ)。

日本の海外留学生が低下する一方、中国人等の留学生数は飛躍的に増えている。これらは日本の学生の質が相対的に低下している一つの兆候だ。厳しい就職活動も学生の知識習得と人間力涵養の上でマイナスに作用している。

つまり日本の教育システムと就職システムや労働市場が、相対的に質の低い学生を生み出しそれが格差の一つの原因となっているというのが私の見解だ。

そしてエコノミスト誌の筆法を借りるならば、リーダー達がやるべきことは、結果としての格差を攻撃するよりも、格差の原因の解消に取り組むべきだということになる。

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スキーウエアにゴアテックスは要らず

2011年01月26日 | スポーツ

今年スキーウエアの上を新調した。今まで冬山用のゴアテックスのアウターを使っていたが、かなりくたびれてきたのでスキー専用のジャケットを購入した。

イオンモールむさし村山のビクトリアで「ゴアテックスのものはありますか?」と聞いたところ「ゴアテックス使用のものは5万円以上するので当店では置いていません」という話。そこで多少の気懸かりを残しつつ、写真のデサントのウエアを2万円で購入した。

この前一日中雪が降り続いたガーラ湯沢で使ったところ、濡れることもなく、保温性は抜群で、ヒートテックのアンダーウェア+フリースのミドルウェア+ジャケットの3層で汗をかく位暖かかった。

結論をいうとゲレンデスキーウェアにゴアテックスは要らずということになる。何故なら高度な防水性と透湿性を備え持つゴアテックスは非常に良い素材だが、ゴア社のブランド神話のためかなり高い。ゲレンデスキーの場合、ゴアテックスの防水力に頼らねばならない程の雨が降ればスキーを止めれば良いからゴアテックスはオーバースペックということになる。

ただし雨が降ったからといって止めることができない山スキーの場合は別で、命を守るお守りとしてはゴアテックスの上着が欲しいところだ。一方山用ジャケットはブカブカしていてスマートさに欠けるし、リフト券やゴーグルなどの収納性が悪いので結局ゲレンデ用・山用は使い分けるのがベターである。因みにパンツについては相変わらず山用のアウターを使っている。パンツはジャケットのように収納力が求められないので、それで良いというのが今のところの結論だ。

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本屋さんが食糧品を売る時代

2011年01月25日 | 社会・経済

アメリカの話だが、書籍の無店舗販売最大手のアマゾンが、取扱商品を日用雑貨や生鮮食料品まで広げてきた。http://fresh.amazon.com/Search?tn=1

FTによるとアマゾンは本拠地のシアトルで、昨年夏から購入金額の多寡にかかわらず無料配送を行なうサービスのテストを始めている。

アマゾンは食糧品を購入する顧客のウエッブサイトへの立ち寄り頻度に注目している。これは1990年代にウォールマートが業容を伸ばす時に取った戦略と同じだ。ウォールマートは、低価格の食糧品販売で顧客の来店頻度を高め、利益率の高い雑貨品の拡販につなげていった。

一方ウォールマートもオンラインショップに力を入れている。ウォールマートは既存店舗をオンライン注文品の集配場所に活用する戦略で、無店舗のアマゾンにはない強みを強調している。なおFTによるとアマゾンは既存の物流ルートを使って英国とドイツでも昨年食糧品の販売を開始した。

☆   ☆   ☆

このような流れを見ていると、日本でもこれから食品や雑貨のオンライン販売が加速しそうだ。今のところ私は日本の食品オンライン販売は主に3つの消費者の需要をつかまえていると考えている。

第一は「多忙・交通手段の問題等で来店購入が難しい消費者が宅配を望む」ケースである。第二は「消費者が高い値段を払っても食材の安全性や素性に拘る」ケースだ。これは無農薬野菜の販売などで強い支持層を持つ「大地を守る会」などが該当する。第三は「訳ありで安い食品を望む消費者をターゲットとする」ケースだ。例えば京王はアウトレット食品として、メーカー在庫処分品などの安値販売を行なっている。

上にあげた三つの傾向は場合によっては一人の人が重ね持っていることもあるだろう。つまり全般的に食の安全性に拘るが、理由がハッキリしていれば安い商品も買うという具合に。

日本の食品小売りの世界にアマゾンが乗り込んで席巻する時代がすぐ来るとは思わないが、オンライン宅配競争は激化しそうだ。それは場合によっては食品業界の構図を変える可能性があると私は考えている。予兆は海の向こうに見える。

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