機関投資家が有価証券を買う時に注意するべきことの一つは同一銘柄を余りに多く買わないことである。何故なら機関投資家がその銘柄を売却しようとする時、みずからの売り注文で値段を崩すからである。またこのリスクを知っている投資家はその銘柄を大量に買うことはないから、同一銘柄を大量保有する機関投資家はその銘柄の売り捌きに苦労する。
ファイナンシャル・タイムズによると、巨大な外貨準備を持つ中国はこの種のワナにはまっている。温家宝首相など政府高官は米ドルの暴落に対する懸念を表明しているが、中国外国為替管理局は米国国債を購入する以外に外貨準備を運用する選択肢がない。
中国外国為替管理局、略称Safe(China's State Administration of Foreign Exchage)が、もし外貨準備を他の通貨で運用しようとすると、その通貨市場を混乱させるとともに、ドル債を売却することで債券価格の暴落を招くと西側高官は述べている。
中国の外貨準備の構成比率は国家秘密ながら、総額1兆9530億ドルの70%はドル資産と推定されている。米国のデータによると3月単月で中国の米国債保有高は237億ドル増加して、7680億ドルになった。
Safeはファニーメイ、フレディマックの崩壊後、米国短期国債へのシフトを強めている。これは将来インフレ懸念から米国金利が上昇するというシナリオに基づくものだが、Safeの考え方に詳しい西側アドバイザーはSafeは外貨準備の大きな部分を米国債に割り当てるという基本戦略を変えていないとファイナンシャル・タイムズに告げている。
中国政府はこのワナから抜け出すべく金投資などを始めているが、金マーケットは中国の外貨準備高から見ると小さ過ぎる。中国政府は民間企業の海外投資規制を緩和することで、政府の外貨運用リスクの軽減を考え始めた。
ところでこのような情報は当然米国財務省は先刻承知いているところだ。彼らは当面安心して国債増発を続けられるだろう。少額の借金をしている場合は債権者が強く、債務者は弱いものだ。しかし債権者の屋台骨を揺るがすほどの借金をしてしまえば、債務者の立場は強くなる場合がある。このことは民間企業と銀行の間だけでなく、国家間にも当てはまるということだろうか?