金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

不況が鍛える日本の会社

2009年05月15日 | 社会・経済

14日付のエコノミスト誌に「不況下の勝ち組である日本の会社」を紹介していた。紹介されている会社自体は、ユニクロ(ファーストリティリング)、無印良品(良品計画)、東洋水産、ニトリなど日本のマスコミでも取り上げられているもので、目新しい話はない。

面白いと思ったのは、エコノミスト誌が紹介していた早稲田の川本裕子教授の「日本より競争の激しい市場では好況であれ不況であれ、革新を行う傾向がある。しかし日本では景気の下降局面で往々にして企業や消費者は新しいことを試みる」という分析だ。

エコノミスト誌は「80年代にユニクロがスタートした時、日本の衣料品店には極めて高価なものか安くて極めて品質の悪いものしかなくその中間がなかった。その中でユニクロは二つの改革を行った。Tシャツ、ジーンズ、セーターなどベーシックでユニセックスな衣料品への集中と中国での生産だと述べる。一般的に中国製=安物というイメージがあるので日本の消費者は中国製品を敬遠する傾向があったが、この既成概念に挑戦したということだ。

エコノミスト誌は「ユニクロの柳井社長の会社を世界一の衣料品小売業にするという野望は不条理なものではない。フォーブスは彼を日本一の富豪にあげた」と結んでいる。

ユニクロ、無印良品、ニトリなどに共通することは「ベーシックでシンプルだが質の高い商品を安い価格で提供する」ということだ。彼らは恐らくそれまでの日本人の一般的な消費神話~高額ブランド志向、日本製志向など~を変えたのだろう。今回の不況が終わっても日本人の所得が大きく伸びることはないと考えると(その理由は日本の周りには中国やインドのような膨大な労働力を抱えた大国があり、そこから安価な労働力が持続的に流入するということ)、彼らのコンセプトはかなり長いトレンドを形成するだろう。

私はブログや雑誌でしばしば「オーバースペックの終焉」ということを書いているが、衣料品や基本家具におけるベーシック・低価格商品への回帰は、家電・車などにも及ぶと思っている。

では総ての分野で低価格商品への回帰が進むのだろうか?これについて私は金銭的に余裕のある人は参加型の趣味の分野~たとえば高級自転車~で、もっとお金を使うのではないかという仮説を持っている。人は単に「高いものを所有する」満足から、それを使い自分を高めることに満足を見出す時代に向かっているのではないだろうか?

もしこの仮説が正しいとすれば、景気が回復した時にはそのようなハイエンド市場にも活路はあると考えているがどういうものだろうか?

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする