昨日(5月25日)の北朝鮮による核実験の目的については、二つの解釈がなされている。一つは北朝鮮が従来と同様米国を脅かして、二国間協議に持ち込み食糧支援などを引き出そうとするとしているというもの。もう一つは北朝鮮の内政にかかわるものだ。内政面では二つのねらい目があると専門家は見ている。一つは脳卒中を患った金正日の後継者へ政権移譲をスムーズに行う狙いだ。今専門家の間で最も有力な後継者とみなされているのが、金正日の三男・金正雲だ。少し前に金正日の義弟・張成澤が国防委員会のメンバーに加わったことは、息子を後継者にする布石と解釈されている。この後継者選択をスムーズに行うには軍の支持が不可欠とされ、その一環として北朝鮮の核能力を示すため今回の実験が行われたとする解釈がある。
次に核実験は食料や電力不足に苦しむ北朝鮮国民に強力な軍事力を示し、人心掌握を図ろうとする狙いがあるという解釈ももっともらしく響く。
私はこのブログを米国外交評議会(米国の外交問題に影響力の強い研究団体)のSheila Smith女史のインタビューレポートとニューヨーク・タイムズの記事などをベースに書いている。これらの情報は韓国の専門家等の見解を集積しているが、これを見ると今回の核実験は内政目的が中心という意見が多い。
核実験を米国から譲歩を引き出すことが目的だとすると、目下のところ完全に失敗に終わっているといわざるを得ない。4月のミサイル発射実験の後、中国とロシアは国連による正式非難には同意しなかったが、今回は両国とも北朝鮮の核実験は2006年の安全保障理事会決議に違反しているという決議を支持する見込みだ。
北朝鮮の核実験が安全保障上脅威なのは、彼らがダイレクトに日本など近隣諸国に攻撃をかけるということよりも、核爆弾や核技術がテロ国家に流出するからだ。ではこれを防止する方法があるだろうか?一つは国連決議に基づいて米国などが、北朝鮮に出入りする船の積荷を検査することである。だがこれは北朝鮮の敵愾心を燃え立たせる危険な賭けだ。
もう一つの手段は、外交評議会のレポートの中でSmith女史が示唆するように、北朝鮮が中国国内(およびロシア国内)に持っているドル預金口座を凍結することだ。いわば資金面で締め上げ北朝鮮の核開発をストップさせるという兵糧攻めだ。中国から北朝鮮への電力輸出を止めるという制裁措置も考えうる。だがこれらは中国のオプションで米国や日本・韓国の選択肢ではない。
中国がこれらのオプションを行使して北朝鮮の核開発をストップさせるかどうかは、中国が金正日政権の崩壊リスクが核開発リスクより小さいとみるかどうかにかかっているというのが私の見方である。