今日(12月4日)米国の11月の雇用統計が発表される予定だ。
DJの予想では11月の非農業部門雇用者増は440千人(10月は638千人)、失業率は6.7%(10月は6.9%)である。
失業率は若干改善するが、雇用者増は鈍化するという予想である。また昨日発表された失業保険申請者数が712千件と前週の780千件より低下しているので、米国の労働市場では改善が進んでいるという見方をする人が多いかもしれない。
だが毎月第一金曜日に発表される雇用統計だけに注目していると米国の労働市場の実態を見誤る可能性がある。
それはコロナの影響で労働市場参加率が低下しているということだ。
今年2月の労働市場参加率は63.4%だったが、10月には61.7%に低下している。WSJによると370万人、率にして2.2%の人が労働市場から脱退して戻っていないという。
失業率の分子である失業者は「求職中の人」を指すので、職探しを止めてしまった人は含まれない。景気後退時には職探しを止める人が増える。一つは仕事探しを止めて、大学に通いスキルアップを図る人だ。もう一つは退職時期に近い人が早めに仕事をやめてしまうケースだろう。
Pew Research Centerが9月に発表したデータによると、ベビーブーマーの退職により、2011年から毎年リタイアする人の数は平均2百万人のペースで増えてきた。しかし今年はそのペースが3.2百万人に増加している。
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安倍前政権の終わり頃、70歳まで働くことができる社会を作ろうということが声高に叫ばれていたが、コロナ騒動でトーンダウンしているような気がする。感染防止の観点から高齢者にはが外出自粛を求める自治体もある位だから、トーンダウンも当然かもしれない。
経済活動がコロナ前に戻るには、労働参加率がコロナ前の水準まで回復する必要があるのだが、コロナによって相当長い間かなりの割合で仕事がなくなってしまった業界(たとえば航空業界)があるので、簡単にはいかないだろう。
株式相場は毎月の雇用統計に敏感だが、雇用の実態は統計ほどには改善していないという見方があることは頭の隅に入れておいてよいだろう。