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金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

ネットワークを広げるには帰属意識を捨てることから

2018年05月31日 | ライフプランニングファイル

日経電子版マネー研究所にコラムニストの大江英樹氏が「お金より深刻な老後問題 暴走老人は孤独が育てる?」という短文を書いていた。

年を取ると周囲とうまくコミュニケーションが取れず、やけになり暴走し、時として傷害・暴行事件を起こすという趣旨だ。大江氏は「毎日同じパターンの生活を繰り返すと脳が劣化する」「脳の中の前頭葉が委縮すると感情抑制機能が低下し、性格が先鋭化する」と述べ、それを防ぐには数ではなく質の高い友人や家族との繋がりを高め老後の孤立を防ぐのが有効だと述べている。

そのとおりだと思う。

敷衍してその具体策を考えてみよう。

一番手軽な方法は何か仕事を続けることだと私は思う。可能であれば70歳くらいまで仕事があれば良いと思う。多くの場合仕事は昔の職場の外にあるだろうから、新しい仕事の仲間ができる訳だ。その仕事の仲間は心を許せるような友人でない場合が多いだろう。だがそれでよいのだ。

そんなに親しくならなくてもそこには「軽い付き合い」があるはずだ。軽い付き合いというのは、相手の中にズカズカ入っていかないという遠慮を伴う。長いサラリーマン生活の中で我々はこの遠慮という感覚が少し麻痺しているかもしれない。遠慮の麻痺が進行するとパワハラやセクハラにつながる可能性が高くなる。

また長年の職場の仲間というものはあるフレームワークを共有している。フレームワークというのは、ものの考え方や交際方法である。フレームワークは便利なもので、考えずに行動できるから脳が疲れない。

だが第2第3の職場にしろボランティア活動にしろ、新しい仲間との付き合いではこのフレームワークは役に立たない。むしろマイナスに作用することもあるだろう。そして大江氏流にいえばフレームワークの中に留まっていると前頭葉が委縮することになる。

だから私はシニアになったら、疲れるけれど一度フレームワークを飛び出そう!と提案したい。

だが実際周りを見ているとフレームワークの中に留まろうとしている人が多い。たとえばお酒を飲む時や遊びに行く時は昔の仲間に限るというタイプだ。

電子メールの書き出しや署名に「何らかの所属団体」の名前を書きたがる人も時々目にする。これは現役時代〇〇会社××部の△△です、といったお作法に慣れ過ぎているからだろう。こういう人は会社を辞めても、学生時代のクラブOB会の誰々といったメールを書くケースが多い。所属団体はその人の属性を端的に表す点で便利なのだが、我々は実は色々な属性を持っている。複数の名刺を持っている(実際に作るかどうかは別として)と考えても良いだろう。

ある特定の所属団体の名前を書くということは、この多様な属性を隠すことになると私は考えているし、一つの属性が多様な繋がりを生む可能性を減らしている場合もあると考えている。

「脳を委縮させない」「暴走化しない」ために私の方法論は大江氏とは少し異なる。つまり薄い付き合いでも付き合いは多い方が良い。薄い付き合いをうまく維持するのは遠慮感覚であり、遠慮感覚は従来のフレームワークを捨てることから始まる。フレームワークを捨てるためには一度特定のグループへの帰属意識を捨てて「素の自分」に戻ろうというものだ。

その中から深い付き合いが生まれてくるならそれを大切にすれば良いと思う。

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世界的には7割の人が週1回はテレワーク

2018年05月31日 | 資格・転職・就職

世界最大のサービスオフィス会社リージャスグループ(IWG)の調査によると、全世界ベースでは働く人の70%は最低でも週1回はテレコミューティングを行っている。また53%の人は最低でも週の半分はテレコミューティングを行っている。

テレコミューティングは日本語では在宅勤務。総務相の情報通信白書では「テレワーク」という言葉を使っている。テレワークは何となく和製英語ぽいが、1970年代前半にアメリカで生まれた造語なので和製英語ではない。テレコミューティングもテレワークもほぼ同じである。

IWGは世界96ケ国で1万8千人のビジネスパーソンに調査を行ったので、日本を含んでいると思うが、日本の個別データを見つけることはできなかった。

そこで日本のテレワークの実態を少し調べてみた。

総務相の情報通信白書によると2016年時点での企業のテレワーク導入率は13.3%であった。

また2017年6月のプレジデントは日本テレワーク協会の調査をベースに「在宅勤務をしたい人は59.1%だったが実際に在宅勤務をしている人は8.9%に過ぎなかった」と述べている。

IWGの調査とは調査方法・調査時点・サンプル数が違うので、単純に比較出来ないが大雑把に言って、世界では約半数の人が仕事の半分を在宅勤務でこなしているが日本では在宅勤務をしている人は1割に満たないというところだろうか?

また別の調査を見ると日本の在宅勤務の特徴が浮かび上がってくる。

国土交通省の「テレワーク人口実態調査」(平成29年)によると、テレワーカー全体に占める20代男性の割合が21.9%、30代男性の割合が21.6%と比較的若い人男性のテレワーカーが多い。40代男性のテレワーカー比率は20.6%、50代男性は18.7%、60代男性は16.2%である。

一方アメリカのある調査を見ると、テレワーカーの平均年齢は46歳で、テレワーカーの5割は45歳上だった。

また日本では男性のテレワーカー比率が女性に較べて、どの年齢層でも相当高いが、アメリカではテレワーカーの数は男女ほぼ同数である。

世界的に見ると急速に普及しているテレワーク。その一番の推進力はデジタル通信技術の発展であることは間違いない。

そしてある種の業種(営業やカスタマーサービスなどが典型)では、生産性の向上が見込まれるので企業側が歓迎していることがある。また企業側としてはオフィス維持費用を削減する効果も期待できる。

一方働く立場では、通勤時間を削減し、またよりフレキシブルな働き方を行うことができるというメリットがある。

もっとも良いことづくめではない。まず働く側には自分を律する強いモチベーションがないとテレワークは成り立たない。企業側としては、勤務時間に連動した報酬ではなく、成果に連動した報酬体系を準備する必要がある。

またたまにはオフィスでミーティングに参加することはあるにしろ、自宅またはその近くのレンタルオフィスなどで仕事をすることになるから「孤立感」を抱く人も出てくる。

日本でテレワークが進まない理由は上で述べたテレワークのマイナス面がプラス面より大きいと感じる企業が多いことだろう(働く人の6割近くはテレワークを希望しているので)。

ところで最近最新のフリーアドレス型オフィスを身近に見学するチャンスがあった。フリーアドレスというのは従業員が固定デスクを持たず、大きな机の周りに集まって仕事をするオフィスの形態だ。

さすがに役員・部長クラスには固定デスクが用意されているが、それ以下の階層は皆オープンスペースを利用していた。

フリーアドレスは幾つかのメリットをもたらす。一つはその時の仕事のテーマ(プロジェクトなど)に合わせて柔軟・迅速にワーキンググループを形成することが可能になる。また固定デスクやわき机がなくなるので「机上整理」が進み、書類の手元保管がなくなるメリットがある。

一方職位が上がると部下と対面するような座り方ができると期待していた向きにはdisappointingな仕組みだろう。そしてフリーアドレスは組織のフラット化を推進するはずだ。

ところで最近私のある顧問先であるプロジェクトを立ち上げるため、座席の配置換えを巡って何人もの人が鳩首会談を繰り返している現場をみた。そしてその後実際に机の並べ変えを行うのだから、相当な時間をこの問題にかけたことになる。フリーアドレスな瞬時にして片付くのだが・・・

私はモノゴトが漸進的に進む(あるいは漸進的にしか進まない)日本では、フリーアドレスの普及がテレワークの普及につながると考えている。それはサラリーマンが椅子取り競争を止めて、自分のライフスタイルを重視した生き方に向かうのと軌を一にするだろう。

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