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最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

アマゾン第2本社20都市に絞り込み~期待される乗数効果

2018年01月19日 | うんちく・小ネタ

昨日(1月18日)アマゾンは第2本社の候補地をカナダのトロントを含む北米20都市・地域に絞り込んだと発表した。この記事は日経新聞にも出ているので、細かい説明は省略する。

アマゾンは年収10万ドル以上の従業員を5万人雇用し、約20年間で50億ドルを投資すると言っているから、238の自治体が誘致合戦に参加してきた。

だが着目するべきはアマゾンの直接効果だけではなく、アマゾンの本社が来ることによる地域経済に与える乗数効果なのだ。

アマゾンが発表している情報によると、アマゾンの本社(シアトル)による直接効果は4万人の従業員、年間23.3万人のホテル宿泊者の創出(2016年)、市営公共交通機関の運賃43百万ドルなどだ。

一方アマゾンは間接効果として「2010年から2016年の間にアマゾンの投資が地域経済に380億ドルの追加投資を生んだ。これはアマゾンの1ドルの投資が地域経済に1.4ドルの投資を創出したことになる」と述べている。

またアマゾンは同期間に5.3万人の非アマゾンの雇用を創出したとも述べている。

またエンジニア・開発系のフォーチュン500企業が2010年の7社から2017年には37社に増えたと述べている。

これらが乗数効果と呼ばれるものだ。アマゾンのように給料の高い企業の従業員は外食・レジャー・フィットネス等への支出割合が大きい。そのためサービス産業で大きな雇用が創出されるのだ。

またハイテク企業は高いスキルや知能を持つ人材を必要とするので、ハイスキルの人材が大量に集まる。そしてハイテク企業が増えてくる。

アメリカの都市経済学者エンリコ・モレッティは「私の研究によれば、都市にハイテク関連の雇用が一つ創出されると、最終的にはその都市の非ハイテク部門で5つの雇用が生まれる」と述べている。

アマゾンが生み出した非アマゾンの雇用の内どれだけが「非ハイテク部門」なのかは明らかでないので、モレッティの学説が正しいかどうかは検証できない。しかしアマゾンの乗数効果が相当大きいことは間違いがない。

情報化時代の都市開発や地域活性化は、このような乗数効果の高い企業を取り込めるかどうかにかかっているのである。

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