金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

野村證券は変わるか?

2009年07月10日 | 金融

野村證券には儲けさせて貰ったり、損を被ったりしている。損の方が多いのが問題だが。もっともこれは私が野村證券の株を自己責任で売買して、儲けたり損したりしているだけで野村の責任ではない。とはいうものの日本を代表する証券会社として業績回復を図って欲しいものである。

その野村についてエコノミスト誌が記事を書いていた。記事によるとリーマンブラザースの買収は今のところ順調に成果をあげている。野村のロンドン証券取引所における株式取扱高は3位になった(以前は相当低かった)。またサウジアラビアで取引ライセンスを得たアジア初の証券会社になった。そして日本の初心者には厳しい投資銀行業務でも、ウッド・マッケンジーのLBO案件でマンデートを取るなど成果を上げている。これらの成果により昨年度7千億円の損失を出した野村だが、エコノミスト誌は今年の第一四半期については今月末に市場を驚かす良い業績を発表するのではないかと予想している。

野村の渡部社長の次の野望はゴールドマン・ザックスやJPモルガンに拮抗する世界のトップファイブに入る投資銀行になることだ。これについてエコノミストは第一の問題は野村の資金力だという。野村證券は日本国内に巨大は販売網を持つので「メリル・リンチのアジア版」といえるがふところは小さい。買収案件や企業の資金調達のサポートでは顧客にファイナンスをつけることが必要だが、野村にその資金力はないのでディールを伸ばすには、みずほのようなメガバンクとの合併が必要ではないかというのが同誌の示唆だ。

また同誌は投資銀行のトップ・グループに入るには米国でプレゼンスを高める必要があると指摘する。そのためにはコストがかかるし、外人インベストメント・バンカーを本当に権限のある高いポジションに任命する必要も出てくる。だがこれは野村のヒエラルキーと摩擦を起こす可能性が高い。

エコノミスト誌は野村本社のヒエラルキーが直ぐに取り払われる見込みは薄いが、リーマンの買収が野村の変革をリードすると期待したいという渡部社長のコメントを引用して、しばしば本当のチェンジは本国から始まると結んでいる。

野村が世界トップクラスの投資銀行になれるとすると、欧米の競争相手が弱っているこの時期しかないかもしれない。だが会社がトップになることとそこで働く社員がハッピーになるかは必ずしも連動しない。例えば世界クラスの投資銀行になるには、英語を社内公用語にする位の変革が必要だろう。しかし「英語が苦手だから外資を選ばず野村に就職した」従業員もいるだろうから話は単純ではないのである。更に役員や役員一歩手前の連中にすると、いくら優秀でもリーマン出身者にわりを食わされるのは嫌だからバトルが起きる訳だ。中々難しい問題である。

コメント (2)
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