今日の日経新聞に「米政府、日産に低利融資」~環境支援で1500億円~という記事が出ていた。これは2007年に米国政府が先進技術自動車製造奨励プログラムとして250億ドルの政府資金を予算取りした中から融資されるもので、今回はフォードが59億ドル、日産が16億ドル、テスラが4.65億ドルの融資を受ける。
米国マスコミの評価は如何?と思い、ニューヨーク・タイムズを読んだところ、面白い文章に出会った。
Tesla was perhaps the wild card in the funding equation because it is a small start-up.という文章だ。
テスラTeslaというのは2003年にカリフォルニア州で設立された電気自動車メーカーでベンチャー企業(start up)だ。そのテスラが米政府から電気自動車開発資金の融資を受けた。文中にあるwild cardをどう解釈するか?がポイントだろう。ワイルド・カードは一般的に「トランプのオールマイティ」とかコンピュータの「検索の時に総ての言葉を代用する記号」という意味だが、この場合は当てはまらない。英語辞書を調べると「重要な人物・要素だが、予想できないこと」という意味があることが分かった。辞書にIn a sailboat race the weather is the wild card. という例文が出ていた。「ヨットレースでは天候がワイルドカード(予想できない重要な要因)だ」という意味だ。
ニューヨーク・タイムズの文章に戻ると「テスラは小さなベンチャー企業なので、恐らく融資決定方程式の中で予想できないが重要な企業だったのだろう」という程度の意味になる。
今回の低利融資プログラムは、金融面で問題のある企業つまりGMやクライスラーは排除されている。その中でテスラは小さな新興企業だが、政府融資を受けることができた。なおテスラはベンチャー企業だが、先月ダイムラーが同社の株式を約10%取得している。また同社は来月から黒字化すると述べている。
テスラの最初の電気自動車ロードスターは10万9千ドルという高値にもかかわらす650台を超える注文が殺到した。また2011年にはモデルSを投入する予定だ。モデルSは一回の充電で300マイル(480km)走行可能。充電時間はわずか45分。価格は57,400ドル、税金優遇措置により49,900ドルになるという。燃費はプリウスの倍というから経済的にも競合しそうだ。
電気自動車の将来はどうなのだろうか?ファイナンシャル・タイムズによると、ミシガン・ベースの調査会社CSM Worldwideは、世界中の自動車メーカーは2015年には10万台の電気自動車を作るだろうと予想している。これは世界の自動車生産台数のわずか0.1%だ。だが、米国政府の省エネ自動車奨励プログラムを受けようと70社以上の自動車メーカーや部品供給業者が申請を行っている。その中には第二、第三のテスラがいるかもしれない。バッテリーの量産による低価格化が進むと電気自動車のシェアが急進する可能性もある。
私は電気自動車はガソリン車向けの巨大な製造ラインを抱えない新興自動車メーカーにある面で優位性があると考えている。テスラはひょっとすると「オールマイティ」という意味でwild cardと呼ばれる日があるかもしれない。
いずれにせよ自動車メーカーや部品メーカー特に金型メーカーなどにとって、電気自動車そのものが「予想できない重要な要素」ということでwild cardになってきたことだけは確かだ。