金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
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雇用を増やすために解雇を容易にする?

2009年06月20日 | 社会・経済

先月ある雑誌で雇用のことを論じた。その中でオランダの新卒採用の慣行を取り上げて、ヒントになるところがあると述べた。オランダの慣行というのは新卒者は一般にすぐに正社員として採用されるのではなく、一年程度は臨時社員として働くというものだ。

日本の最近の新卒者は就職後1,2年で離職する人が増えている。離職する人の中には「就職をやり直し」ている人がいる。特に不況期で求人が少ない時に就職した人はこの傾向が強い。しかし「やりなおし就職」は必ずしも成功しない。特に新卒後1年以内でやめた場合、無職や非正社員になることが多いといわれている。

それであるならば「新卒者が非正社員化することを防ぐために、全員が非正社員からスタートするのは逆接的ながら面白いのではないか?」という私の提案に至った次第だ。

ところで最近「経済危機『100年に一度』の大嘘」という本を読んだ。その中に「デンマークでは毎年11%の労働者が解雇され、20%の人が自発的に転職しているがデンマークの長期失業率は0.1%だ」「驚異的な長期失業率の低さは『十分な再雇用支援』『リストラの自由度の高さ』『手厚い生活保障』というゴールデントライアングルが可能にしている」という話が出ていた。

日本では正社員の解雇が困難なため、企業は正社員の採用を抑制し、賃金が低くて解雇しやすい非正社員を増やす行動を取っている。これはドイツ、フランスなどと共通する傾向で、労働力の流動化を抑制し、雇用が硬直化している。この結果日本・ドイツ・フランスの経済成長率は労働者の解雇が容易な北欧やアメリカに較べて低かったといわれている。

そこでタイトルの「雇用を増やすために解雇を容易にする?」という一見矛盾した提案となる訳だ。だが労働力の流動性は「解雇を容易にする」という法改正だけで進むものではない。従来の日本の制度は長期勤続を優遇するように設計されているので、年金や退職金の制度・税制まで変更する必要がある。大仕事であるが真剣に検討するべき課題だろう。

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