FTによると昨日(6月19日)世銀は中国の今年のGDP成長率見通しを7.2%に引き上げた(前回3月の見通しは6.5%)。世銀は中国政府の景気刺激策が功を奏していると述べるとともに、政府が4兆元(5900億㌦)の景気対策を打ったが、回復の持続には確信が持てないと述べている。
中国の財政収支は急速に悪化しており、世銀は中国の財政赤字は政府予想のGDPの3%を超え、5%に達する(昨年は0.4%)と予想している。中国政府は一杯一杯の状態で、世界の景気が回復し、中国の輸出が再び拡大に向かうまで、市場ベースの投資と消費はリバウンドしないと思われる。世銀は中国の2010年の成長率は7.7%と予想するが、これは07年の13%や昨年後半の9%よりかなり低い水準だ。
中国政府の景気刺激策はインフラ投資や固定資産投資が中心となっていて、消費を拡大するために必要な社会的なセーフティ・ネットへの投資がかけていると世銀レポートは指摘している。
話は日本のことになるが、実は世銀の中国に対する指摘はそのまま日本に当てはまる。日本の公共事業支出のGDPに占める割合は3.5%でアメリカ(2.6%)、イギリス(2.1%)、ドイツ(1.3%)より高い(いずれも2005年度)。ところがGDPに対する社会保障費では日本はかなり低い位置にいる。データは少し古くて03年のものだが、医療に関する日本の社会保障のGDP比率は6.1%でドイツ8.0%、フランス7.6%、アメリカ6.7%より低い。また福祉に関してはデンマーク10.5%、スウェーデン7.3%、フィンランド6.9%と北欧諸国が上位にくるが、イギリス5.3%、アメリカ1.8%も日本の1.6%より上である。
中国が「唯一成功した社会主義国家」と言われている日本の轍を踏むかどうかは注目しておきたいところだ。