金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

アジアのインフレで儲ける米企業

2008年07月23日 | 社会・経済

今日(7月23日)の日経新聞に「たまごの値段がワンパック(10個)で30円上がった」という記事があった。じわりじわりと日本でも物価が上がり始めているが、アジア諸国の物価上昇はこの程度ではない。アジア開銀が火曜日に発表したレポートによると、世界的な食糧と原油高がアジア諸国で賃金を押し上げ始めている。アジア諸国の賃金上昇は米国がアジアから輸入する商品価格を上昇させ、米国の物価高につながっている。

アジア開銀のレポートは「インフレ抑制のために金融引締政策が必要」と指摘している。今年の初めの頃は、物価の上昇は主に食糧とエネルギー分野で起きていたが、現在ではより広い範囲のインフレ傾向が顕著になっている。

例えばインドネシアのコアインフレ率(食糧・エネルギーを除く)は12月の6.3%から5月の8.7%に上昇。同じ時期にフィリピンのコアインフレ率は2.6%から6.8%に上昇している。

インフレ抑制のためにアジア諸国は、政策金利を引き上げたいところだが、米国が金利を据え置いているので、上げたくても上げられない状況だ。もしアジア諸国が金利を引き上げると、国際的な投機資金が流入し、アジア諸国の通貨が高くなる。通貨が強くなることは、輸入している食糧やエネルギーの価格が下がることを意味するので、この点では歓迎するべきだ。しかし通貨高は輸出競争力を失速させる。

この動きの取りにくい状況の元で、困難度合いが高まっているのはアジアの低所得層だ。そして利益を得ているのは、アメリカの輸出メーカーだ。例えば建設・鉱山機械の世界最大のメーカー・キャタピラー社は第2四半期で史上最高の利益を上げた。(同業種のコマツも最高益を更新している)

キャタピラー社はインフレとドル安の両方のメリットを最高に享受している。高いインフレ率は株価収益率のターゲットを低くするので、一般に株価にネガティブな影響を与える。実際インフレ懸念が高まってから、中国やインドの株も相当下落した。(因みにキャタピラー社の株は過去5年で見ると、ダウ平均のパフォーマンス27%の5倍近い135%のパフォーマンスを上げている)

キャタピラー社などトラック・建設セクターの株は、景気のバロメーターと言われている。アジア諸国の貧民の犠牲の上でアメリカの経済が少しずつ良くなる兆しが出ているのだろうか?

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Pull together (イディオム・シリーズ)

2008年07月23日 | 英語

Pull togetherは「(特に何か結果を出そうとして)グループとして仕事をする」という意味だ。ニューヨーク・タイムズに次の文章が出ていた。Doctors, staff and patients pull together as one big health-care family. 「医者、スタッフ、患者は一つのヘルスケア・ファミリーとして一緒になって働く」

米国では総医療費を削減するために、ホームドクターを核として慢性的な患者を電話や電子メールなどで診察・治療するあるいは定期的な検診の連絡を取るなどという実験を行っている。医療費の高騰に悩む日本でも、参考できるところはある話だろう。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

診察代を払って総医療費を下げる?

2008年07月23日 | 健康・病気

最近ワイフが地元の総合病院に診察に行った時実際に聞いた話だ。その病院では午前9時からの診察だが、診察券は午前6時から出している。気の早いお年寄りの中には5時頃から診察券を取るために、病院に出かける人がいるということだ。「朝の5時から病院に出かけられる程健康なら病院に行く必要があるの?」と思うが、高血圧など慢性病で投薬を受けるだけでもこのような手順を踏む必要があるそうだ。

さて表題の「診察代を払って総医療費を下げる?」だが、ニューヨーク・タイムズに出ていたCutting health costs by paying doctors more?の訳だ。タイトルの意味を解説すると、今アメリカでは大規模な実験が行われている。それは「コストの安いホームドクター、内科医、小児科医の診察を受けることで、コストの高い専門医の治療を減らすことができる。トータルとして患者や医療保険会社は多額の医療費や通院に要する時間を節約することができる」というものだ。

この実験~メディカル・ホームと呼ばれるが~では、ホームドクターの診療は対面診療とは限らない。慢性病の場合は、血圧や血糖値の値を電子メールや電話で伝えることで、医者の指示を得ることが可能だ。「メディカル・ホーム」という「医者・医者以外の医療スタッフ・患者が一緒に作るヘルスケアの家族」という説明が新聞には出ている。

メディカル・ホーム全体の構想はさておき、慢性病で薬だけを継続的に貰う患者の場合は日本でもこのような方法で、血圧などを医者に伝えることは可能なはずだ。これができると患者は診察券を得るために早朝から病院に行く必要がなるなる(あるいは既に行われている病院があるかもしれないが・・・)

アメリカではホーム・ドクターと専門医では収入に相当な差がある。ホーム・ドクターは年収15万ドルで消化器官専門医は40.6万ドル、心臓病専門医は43.3万ドルという金額がニューヨーク・タイムズに出ている。従ってホームドクターの診察を受ける方が専門医の治療を受けるより安いという計算が成り立つが、日本の場合一般医と専門医の所得格差がこれ程あるとは思わないので、同じ計算は成り立たないかもしれない。

また米国の識者の中には「メディカル・ホーム」構想が上手くいくとは思わないという人がいる。もう少し時間が立たないと構想の良し悪しは評価できないだろう。しかし簡単にまねが出来そうなところは、日本でもまねをしても良いと思うのだが、どうだろうか?

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする