今日(7月23日)の日経新聞に「たまごの値段がワンパック(10個)で30円上がった」という記事があった。じわりじわりと日本でも物価が上がり始めているが、アジア諸国の物価上昇はこの程度ではない。アジア開銀が火曜日に発表したレポートによると、世界的な食糧と原油高がアジア諸国で賃金を押し上げ始めている。アジア諸国の賃金上昇は米国がアジアから輸入する商品価格を上昇させ、米国の物価高につながっている。
アジア開銀のレポートは「インフレ抑制のために金融引締政策が必要」と指摘している。今年の初めの頃は、物価の上昇は主に食糧とエネルギー分野で起きていたが、現在ではより広い範囲のインフレ傾向が顕著になっている。
例えばインドネシアのコアインフレ率(食糧・エネルギーを除く)は12月の6.3%から5月の8.7%に上昇。同じ時期にフィリピンのコアインフレ率は2.6%から6.8%に上昇している。
インフレ抑制のためにアジア諸国は、政策金利を引き上げたいところだが、米国が金利を据え置いているので、上げたくても上げられない状況だ。もしアジア諸国が金利を引き上げると、国際的な投機資金が流入し、アジア諸国の通貨が高くなる。通貨が強くなることは、輸入している食糧やエネルギーの価格が下がることを意味するので、この点では歓迎するべきだ。しかし通貨高は輸出競争力を失速させる。
この動きの取りにくい状況の元で、困難度合いが高まっているのはアジアの低所得層だ。そして利益を得ているのは、アメリカの輸出メーカーだ。例えば建設・鉱山機械の世界最大のメーカー・キャタピラー社は第2四半期で史上最高の利益を上げた。(同業種のコマツも最高益を更新している)
キャタピラー社はインフレとドル安の両方のメリットを最高に享受している。高いインフレ率は株価収益率のターゲットを低くするので、一般に株価にネガティブな影響を与える。実際インフレ懸念が高まってから、中国やインドの株も相当下落した。(因みにキャタピラー社の株は過去5年で見ると、ダウ平均のパフォーマンス27%の5倍近い135%のパフォーマンスを上げている)
キャタピラー社などトラック・建設セクターの株は、景気のバロメーターと言われている。アジア諸国の貧民の犠牲の上でアメリカの経済が少しずつ良くなる兆しが出ているのだろうか?