金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

走る前に一息入れて

2008年07月16日 | 金融

「走る前に一息入れて」といっても、運動の話ではない。現在米国で起きている預金取り付け騒ぎに対する大統領の演説だ。昨日(7月16日)米国ではバーナンキ連銀議長が、上院の銀行委員会で経済動向について悲観的な証言を行っている時、ブッシュ大統領は別の会議で演説を行った。大統領は私が望むことは「(銀行に慌てて預金を引き出しに行く前に)一息いれて良く考えて、自分達の預金は政府によって保護されていることを理解して欲しい」ということだと述べた。

米国では先週インディマックという大手地銀が破綻したことや、ファニーメイ・フレディマックという住宅金融公社の株価が大暴落していることから、預金者の間で不安が高まっている。銀行の取り付け騒ぎをBank runという。Runは「走る」のrunだが、「取り付け」という意味もあるのだ。

ブッシュ大統領の演説はTake a deep breathというもので、これは文字通りの意味は「深呼吸をする」だが、イディオムとしては一休みして考えるという意味がある。つまり預金保険によって預金は保護されているのだから、慌てて預金を引き出す必要はないという訳だ。

この話を聞くと10年前の日本の金融の状況を思い出さざるを得ない。また識者が盛んに「日本人は金融リテラシーがアメリカ人に較べて低い」といった意見を述べたことがあった。だが昨今の状況を見ているととてもアメリカ人の金融リテラシーが日本人よりはるかに高いなどとは思い難い気がする。似たり寄ったりであろう。

米国ではなお幾つかの地銀が破綻するだろう。今の市場の合言葉はToo small to rescueである。つまり救済するには小さ過ぎる地銀は倒産するということだ。

しかし冷静に考えると「銀行の破綻は景気悪化の先行指標ではなく、遅行指標だ」ということだ。景気悪化の中で頑張ってきた個人や法人が万策尽きてギブアップする。それが累積して銀行の不良債権が増加して、銀行も破綻するのだ。逆にいうと銀行の破綻が目立つということは、実体経済の底に近づいたと考えても良いだろう。

ところで経済問題に疎いと思われているブッシュ大統領の演説を聴いて、アメリカの預金者達は本当に深呼吸することが出来ただろうか?

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Crack down(イディオム・シリーズ)

2008年07月16日 | 英語

Crackは「ひびが入る」「激しくぶつかる」「こじ開ける」という意味で、名詞では「ひび」という意味がある。例えば岩の裂け目で靴が入るほどの幅のものをクラックという。余談だがクラックは登攀ルートとなることが多い。

さてCrack downである。これは「厳重に取り締まる」「(法や規則を守るため)断固とした処置を取る」という意味だ。ファイナンシャル・タイムズに次の文章が出ていた。

The action comes amid intensifying efforts by authorities to crack down on rumour - mongering intended to manipulate securities prices.「そのアクションは証券の価格を操作する目的で風説を流布することに対する当局の取り締まり強化努力の中で行われた。」

Rumour-mongeringとは噂を撒き散らすこと。偽りの噂ということでFalse rumourという言葉も使われる。日本では金融商品取引法で「偽りの噂を流して証券の価格操作を図ること」は風説の流布として禁じられている。日本の金融商品取引法など証券法制はアメリカを範としているので、当然米国でも風説の流布は禁じられている。

ところで「そのアクション」とは何か?というとNaked short-sellingを禁止するという証券取引委員会の規制である。Naked short-sellingとは「裸の空売り」。つまり株を借りないで空売りすることである。

米国の金融市場は混乱の最中にあり、新聞などには色々な表現や専門用語が登場する。金融英語を勉強する絶好の機会だろう。

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